公的健康保険制度により私たちの医療費には自己負担上限額があります。主な現役世代では健康保険証を提示することにより、医療費総計の3割が自己負担分です。
これに加え少子化対策の一環として、各自治体で〇〇歳までの医療費を無料とする施策が導入され、各自治体に広がっています。とても歓迎すべき動きですが、この施策には落とし穴もあります。
自治体の医療費無償施策を正しく理解する
自治体の医療費無料施策は教育費のかかる18歳前後までの子どもに対し、病気やケガの治療の際に医療機関への医療費を無料とするものです。これにより子育て世代は万が一の医療費を心配しなくていいため、教育費の確保など家計改善に繋げることができます。
筆者は生命保険のコンサルティングで数多く話を聞く幼児期の子どもの両親から、これで子どもたちへの医療保険は不要という声を数多く聞きました。これは基本線としては正しいのですが、1つ落とし穴があることに注意です。それは、自治体の財政によって施策の中身が異なる点です。
先進医療は含まれないところが多い
実際にかかる医療費すべてを例外なく保障する自治体もあれば、月々の上限額を設定しているところもあります。子どものいるファミリー世帯の増加は自治体の税収増加に直結するため、少子化に力を入れている自治体ほど支援が手厚い印象です。
そのなかの傾向として、公的保障の対象となる部分は無償の対象であるものの、公的保障外の医療費は自己負担となる設定が目立ちます。少子化施策と財政状況を見合った妥協点といえるでしょうか。代表的なものが先進医療です。
先進医療はがんなどの重い病気に罹患した際に、最新の技術を使って対処する医療方法です。自治体支援の対象となる幼少期は壮年期や高齢期と比べて重い病気になるリスクは低いものの、まだ預貯金が心許ない家計も多く、突発的としても高額の医療費負担は高い家計圧迫要因となります。
自治体支援の不足分を医療保険でカバーする
筆者が生命保険のコンサルティングでよくお伝えするのは、自分の子どもが対象となる自治体支援の濃度を早めに確認し、どこまで利用できるのか、負担はどこまで経るのかを可視化することです。
数年で子どもに年齢制限が適用される場合
多くの無償化支援は15歳、もしくは小学校卒業時まで(12歳)が主流です。現時点は医療費無償化の対象でも、数年以内に対象から外れる世帯もあるでしょう。その場合は外れた段階で民間の医療保険が必要になります。
この時に注意なのは解約返戻金のある医療保険ではなく、掛け捨てを検討すること。最新のニュースを見るとこれら年齢制限の撤廃若しくは延長に踏み切る自治体も増えてきています。自治体支援の拡充で年齢制限が撤廃された際に、すぐに民間の医療保険を解約できるようにするためです。
返戻金があると「せっかく加入してしまったので」と加入を続け、結果的に支出総額が高くなってしまいます。
この考え方は所得制限にも適用できます。子育てが復帰して再び仕事を始める際、家計によっては所得制限で医療費無償化の対象外となることがあるでしょう。現役世代の所得額は上下変動があります。
平均より高い収入が見込めても、突然の入院などによる先進医療の医療費は大きな負担になります。いつでも起動修正できる掛け捨ての医療保険を子どもにかけ、自治体の保障に切り替えることが家計負担を最小限に抑えるポイントです。
カスタマイズ性の強い医療保険を選ぶ
それではどのような医療保険を選べば良いのでしょうか。筆者がお勧めするのは、カスタマイズ性の強い保険です。入院給付保障は大半の医療保険の根幹です。ここに先進医療保障を特約でつけるのが基本線です。
通院給付と特定損傷特約
幼少期は風邪を引きやすく、医療機関によく通う子どもも多いでしょう。筆者も幼少期は小児科喘息でしたが、小学校以降はまったく気配が無くなりました。入院に至らないが通院歴が家計を圧迫しそうな場合、通院給付がお勧めです。
また腕白な子どもはケガのリスクがついて回ります。捻挫や靭帯損傷が特約で特約で選択できる医療保険は、全体の保険料を抑えることができるメリットがあります。
最近は〇〇と△△を組み合わせて、といった保険会社が選んだ医療保険より、保険加入者が自由に組み合わせて自分にとってベストの保険を選ぶ、カスタマイズ型の保険も増えています。
数十年前には職場に保険の営業マンが来て「あんた保険くらい入りなさいよ(言い方は想像)」と言っていた時代を考えると、それだけ加入検討者のリテラシーが上がったということでしょう。
生命保険は投資です。掛け捨ての保険に過剰な嫌悪感を示す方々もいますが、最低限の保障をかけて何も無かったね、というのはきわめて正当な投資の結果だと思います。自治体の支援が広がってきているなかの不足分を算出し、リスクを摘み取るのも家計における投資の1つです。
万が一のときに自治体の支援が聞かないと焦ることのないように、自分の家計に必要な医療費への投資を可視化し、対策を講じていきましょう。