2020年に端を発した新型コロナウイルスの世界的流行は少し落ち着いてきたでしょうか。生命保険の世界でも「コロナに罹患したら保険金を出します」という商品が相次いで販売されました。ところが2021年冬から新種である通称オミクロン株が蔓延を見せると、少短(少額短期保険)を中心に販売されていたコロナ保険がパンクし、保険金額の変更や商品の新規受付停止に発展しました。
少短は「そんな保険ないよね」への風穴を開けた存在
少短は2008年にスタートした、既存の生命保険や損害保険ではカバーできないニッチな市場に対して設計された保険です。弁護士に相談するお金を保障する保険、自転車の事故を保障する保険など、さまざまな商品が販売され、保険に詳しくはない一般の方にも少短という言葉が浸透してきています。少短のターゲットはまさに「そんな保険ないよね」に対するアプローチです。今回のコロナ禍という誰も予測できなかった事態にも少短は中心的に動きます。
コロナの販売停止から見た少短の不透明さ
コロナ保険においても少短の保険会社は高い存在感を見せます。ただオミクロン株の勢いが急拡大すると保険金の支払額が急増し、ある少短の会社では新規募集停止のうえ、既契約の保障内容を変更する事態に至りました。特に某社の既契約の保障内容見直しは監督官庁である金融庁も看過できず、行政処分に至ります。
それ事態は由々しき事態にしろ、筆者はさまざまな分野で少短の保険商品が新開発される状況は歓迎すべきと捉えています。気になるのは今回の件で一部の専門家が唱えた「少短よりも現金で持っていた方が安全」は、結果論過ぎはしないだろうかという意見です。現預金があるから少短、広義では生命保険は必要ないという意見はよく聞かれますが、マジョリティである多くの家計は保険の代わりになる預貯金を本当に管理できているのでしょうか。
どれだけの家計が現金を区分できているか
まず前提として、筆者はFPの活動のほかに生命保険会社に属していることもあり、生命保険にはポジティブな立ち位置です。もちろんライフプランのあらゆる局面で保険は必要ではなく、今は入らない方がいい、というアドバイスができる保険関係者を信じるべきとも思います。
ただ、保険に入るくらいなら現金で持っておいた方がいいが通じるのは、あくまで日常生活費の管理とは別に自分だけの保障用の口座を持っていて、日頃何もないと絶対に該当口座からお金を引き出さないような、高い統制感を持っている人だけだと思います。筆者自身FPとして活動していますが、残念ながら自分をコントロールできる自信はあまりありません。
今回のコロナにおいても同様で、コロナが急拡大した際に、自分が罹患したらどうしよう、家族が罹患して重篤化したらどうしようという懸念は多くの方が持ちましたが、実際にコロナ罹患のリスク分、預貯金を殖やすことができた家計はどれだけあるでしょうか。リスク管理とは、自分たちが罹患せず対岸の火事だったときに、自分の家計に当てはめてどうなったかを想像することです。現実的には難しいですが、この作業をできることが家計のコントールに繋がります。
さて、生命保険のなかでも特にコンパクトな保障を目的とする少短は、現金で貯めた方がいいのかな、でも自信無いな、に対応する商品です。コロナでは予想外な事態も報じられましたが、だからこそ本質的な魅力まで否定することなく、上手に活用していけばいいのではと思います。
まずは自分の生活にフィットした保険を探すところから
少短にどのような保険ラインナップがあるかを探すには、Googleなどで各社の保険商品を確認するほか、統括的な役割を担っている少短の協会でも各種商品が紹介されています。また複数の少短を扱っている乗合の保険代理店などにアプローチするのも賢い方法です。客観的な必要性を知りたければ、保険などの商品を販売しないお金の専門家に相談するのも選択肢に残しておきましょう。
可能であればファイナンシャルプランナーに相談に乗って貰える保険代理店を探しましょう。少短は保険料が安いこともあり、生命保険のようなライフプラン診断のもとで保険商品の案内を受けるような仕組みはまだ広がってはいません。
インターネットに限らず、窓口で相談を受けられる保険会社などもお勧めだと思います。ただ、少短は1年ごとに更新が必要なため、窓口における申込だと加入後の手続きが面倒な側面はあります。このあたりは、少短がより浸透することで、変化が期待される部分だと考えています。
まずは自分の生活にフィットした保険を探すところからです。それは言葉にして説明できる場合もあれば、保険のラインナップに精通した専門家に相談を受けてはじめて可視化されることもあります。まずは一歩、気軽な気持ちで動き、自分自身の家計にとってのリスク削減に努めましょう。