BTC、10%超上昇 最高値の視野に
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年5月14日12時過ぎ、対円では1526万円前後と前週(7日前)比で約11%高い水準で取引されています。BTCドルが10万3500ドル台と、月初来でおよそ10%高と堅調です。
5月に入った当初は買いが先行も、BTC円は1420万円辺りで一旦伸び悩み、6日には1331万円台まで下押しました。しかし、そこから切り返し始めると買いの勢いが徐々に増し、9日には1520万円まで上げ幅を広げます。週末も底堅く、週明け12日には2月4日以来の高値となる1559万円台まで上値を伸ばしました。
※Trading Viewより
BTCドルも、9万3300ドル台を底に上昇し、8日には目先の抵抗水準だった9万8000ドルを超えて一気に2月以来の10万ドル回復に成功しました。その後、一時10万5700ドル台と1月末以来の高値圏まで値を上げる場面がありました。
BTC円は史上最高値1707万円付近にまで、執筆時点では12%ほどと若干距離がありますが、BTCドルは最高値10万9300ドル台まで約5%と完全に視野に入ってきました。なおドルベースでBTCの時価総額は2兆800億ドルと、過去最大の2兆1000億ドルに迫りつつあります。
ニューハンプシャー州が先陣を切った
ビットコイン(BTC)上昇のきっかけの1つが、米ニューハンプシャー州でBTCを含む暗号資産準備金に公的資金の投入が認められたことです。
前回コラムの第144回「ビットコイン、不安要因が後退し3カ月ぶりの月間プラス そして準備金でアリゾナに注目集まる」では、アリゾナ州が暗号資産の戦略的準備金導入の先頭を走っていると伝えました。
しかしながら、「州財務長官が州資金の最大10%をビットコインやその他の暗号通貨に投資できるようにする法案」に対し、ホッブズ・アリゾナ州知事が拒否権を発動します。同知事は暗号資産は未検証と位置づけ、アリゾナ州の公的退職年金を投じるのは不適切としました
一方でニューハンプシャー州のアヨッテ知事は6日、時価総額5000億ドル以上のデジタル資産および貴金属に、最大で公的資金の5%を投資することができる法案に署名しました。インフレ対策や州財政の資産多様化が目的とされています。
時価総額の対象を満たす暗号資産は、現時点ではビットコイン(BTC)のみです。法案成立で、ニューハンプシャー州は準備資産としてビットコインを正式に導入した全米初の州となりました。
アメリカ合衆国独立時の13州のひとつが、やはり先陣を切ったという分けです。アヨット知事は、ニューハンプシャー州の公式標語「Live Free or Die(自由に生きる、さもなくば死を)」の精神で、商取引とデジタル資産の未来を切り開くと述べました。
なお、アリゾナ州では複数の暗号資産関連法案が議会を通過しています。「デジタル資産戦略準備基金の設立や、政府機関が暗号通貨による支払いを受け入れることを可能にする法案」についても、アリゾナ州知事は拒否権を発動。一方、「未請求資産等の管理・保管」に限定した暗号資産準備金法案は認められました。
貿易摩擦の緩和も支援材料
この1週間でトランプ米政権の関税政策を巡る警戒感がかなり後退したことも、暗号資産の追い風となりました。
まず8日は、米国は英国と貿易協定の合意を発表。新たな貿易枠組みとして米国は英輸入品に対する10%の基本税率を維持するものの、一定数の英自動車に対する輸入関税を引き下げられることになりました。英国は米国に対する関税率を引き下げ、米製品の市場アクセスを拡大するとされました。米国にとっては、関税強化策の実施後に始まった他国との貿易交渉で初めての合意です。
さらにその後、10~11日にスイスのジュネーブで行われた米国と中国の閣僚級貿易協議で歩み寄りが見られました。両者は、互いに課していた追加関税を115%引き下げることを決定。そのうち24%については、撤廃ではなく90日間の停止とされています。米中は今後も貿易関係や経済について話し合いを続けるということです。
世界経済の二大国による貿易摩擦が緩和することなり、買い安心感が広がった株式市場は急騰。金融市場全般も一気にリスクオンの動きが広がりました。ただ暗号資産については、その前に既に上昇していたこともあり、材料出尽くし感から売られる場面もありました。
暗号資産企業として初めて!!
今週に入り、暗号資産業界にとってはビッグニュースが飛び込んできました。
「コインベース、S&P500種に来週採用…」Bloomberg
S&P500(エスアンドピー500)とは、米国株式市場を代表する株価指数1つです。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社によって算出されており、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やNASDAQに上場している500社の時価総額を基にしています。
500の構成銘柄は様々な業種にわたり、米株式市場全体の時価総額の約75%をカバー。米経済全体の動向を反映し、いわゆる「経済の健康状態」を把握するための重要な指標として広く利用されています。
S&P500に選ばれるには、米国企業やNYSEまたはNASDAQに上場しているだけではなく、時価総額や浮動株比率、利益の安定性などの厳格な基準を満たす必要があります。そこに、大手の暗号資産交換業者「コインベース・グローバル」が暗号資産企業として初めて採用されることになりました。
※Trading Viewより
コインベースのS&P採用は、「暗号資産が伝統的な金融市場において認知され、受け入れられ始めた」ことを示しています。今後も業界全体の信頼性が向上すれば、暗号資産関連の企業が「主流の金融資システム」に組み込まれることが期待されます。
今回の動きは暗号資産業界にとって重要な節目とされ、市場における影響が今後も注目されます。