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ドル円、買い戻しが続く?
今週のドル円は買い戻しが先行しました。米中両国は14日、互いにかけていた関税を115%引き下げたと発表。米国の対中関税は30%、中国の対米関税は10%と大幅に縮小しました。米中緊張緩和が期待されますが、引き下げ分のうち24%は90日間の停止措置で、協議次第では再び上昇する可能性が残るようです。両国は貿易協議の枠組みを新たに設置し、閣僚級協議を続けるとしています。
米中両国が関税の大幅な引き下げで合意したとのニュースは今週12日に伝わりました。これを受けて、週明け12日のマーケットでは貿易摩擦が世界経済に悪影響を及ぼすとの懸念が後退したことで、米株式市場でダウ平均が1100ドル超上昇するなど、株価が堅調に推移。投資家のリスク志向が改善し、円売り・ドル買いが優勢となりました。米長期金利の上昇に伴うドル買いも入り、ドル円はこの日のNY時間に148.65円と4月3日以来の高値を付けています。市場では「今回の米中協議で決まった関税率の引き下げ幅は予想よりも大きかった」との声が聞かれました。
*Trading Viewより
ドル円は4月22日に一時139.89円まで値を下げましたが、結局昨年9月16日の安値139.58円がサポートとして働くと、そのあとは反発。4月31-5月1日の日銀金融政策決定会合を受けて円安が加速する格好となっています。
なお、日銀は政策金利を市場予想通り0.50%に据え置きましたが、同時に公表した4月の展望レポートで経済成長率や物価見通しを前回(1月)から下方修正。また、植田和男日銀総裁は記者会見で「米国の関税政策などの影響で、中心的な見通しを巡る不確実性は従来以上に大きくなった」との見解を示したほか、「見通しの実現確度はこれまでほど高くはない」「次の利上げのタイミングは見通し変更の有無などで前後する」などと発言。市場では「日銀の利上げ時期が不透明になり、早期の利上げには動かない」との見方が広がりました。
投機筋の円買いポジション、拡大は一服も高水準
米商品先物取引委員会(CFTC)が5月16日(日本時間17日早朝)に発表した5月13日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は17万2268枚の円買い越し(ドル円のショート)と前週から4591枚減少しました。
*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成
投機筋の円のポジションは昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが優勢に。4月29日には17万9212枚と過去最大を更新しています。先週、今週はその動きが一服となっていますが、依然として17万枚を超えており、投機筋のポジションが大きく偏っている状況です。
「米中両国の関税引き下げ」や「日銀金融政策決定会合」を通過し、ドル円が反発したにもかかわらず、個人的には「ポジションが整理されていない」との印象です。ポジションが非常に偏っている状況に変わりはなく、行き過ぎた「ポジションの偏り」の反動で円安方向に大きく動く可能性は引き続き警戒されます。
週末に不穏なニュース 為替協議の思惑も
米格付け会社ムーディーズは16日のNYクローズ直前に、米国の信用格付けを「AAA」から「AA1」に引き下げたと発表しました。政府債務の拡大や利払い費が増加していることが理由。なお、見通しは「安定的」としています。フィッチ、S&Pに続いて「トリプルA」格付けを失うことになりました。
なお、ムーディーズは2023年11月に、米格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げており、1年半経過した本日16日に引き下げを行っています。個人的な感想として「何で今!?」です。週明け19日の東京市場がいつも通りネガティブニュースを受けとめる役目を負いそうです。
ドル円の一目均衡表チャートを見ると
ドル円の一目均衡表チャートを見ると、今週は見事に雲に頭を抑えられた格好となっています。16日取引終了時点では雲の上限(148.98円)、下限(146.46円)となっており、ここを明確に上抜けることができるかどうかが焦点となっています。一方、転換線は145.51円、基準線144.27円となっており、週末の終値(145.70円)で上回っています。
*Trading Viewより
一本調子で円高・ドル安が進むとも考えづらいですが、来週は米関税政策や日米協議の行方次第で値が振れやすい展開も想定されます。日米財務相会談や3回目の関税交渉に大きな関心が集まっており、為替協議の思惑が高まれば、円高方向に進む可能性も。ムーディーズによる米国格下げのインパクトも完全に織り込めていない状況ですので、特に来週前半は丁寧なトレードを心掛けたいところです。
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