トランプ米大統領の「株買い推奨」発言により、株高にともなるリスク選好でドル円も上振れる場面がありました。足もとのドル円上昇は一時的にとどまりましたが、「株買い推奨」発言は株価上昇を誘うような政策の変転を示唆している感があります。トランプ大統領の「株買い推奨」発言の影響に今後も注意しておいたほうがよいでしょう。
「株買い推奨」発言で株高、ドル円も一時上昇
先週末の米現地8日、トランプ米大統領は「今すぐ株を買った方がいい」と発言しました。この「株買い推奨」発言が伝わるなか、同日41300ドル台で動き始めたダウ平均が一時41700ドル台まで上振れるなど米株が押し上げられています。
金融マーケットは全般的にリスク選好の地合いを強める流れとなりました。株価上昇だけでなく、為替市場ではリスク選好の円売りからドル円が発言前の145円前後から、146円台へ上昇する動きとなりました。
週明け12日には米中が関税の大幅な引き下げに合意したこともあって、ダウ平均が42000ドル台へ上伸するなか(図表1)、ドル円は148円台を回復(図表2)。ただ、4月3日以来の同大台でドル円は伸び悩み、13日発表の4月米消費者物価指数(CPI)が事前予想より弱い内容となったこともあって、足もとではさらに調整安が進んでいます。
1カ月ほど前にも「株買い推奨」発言
トランプ大統領は4月9日にも株式市場について「今は買いの好機」と「株買い推奨」発言をしていました。その際も37300ドル台で続伸して動き始めたダウ平均はさらに4万ドルの大台に乗せ、同日中に一時40700ドル台まで上昇幅を広げていました。
この局面の動きにはトランプ大統領の「株買い推奨」だけでなく、「相互関税」について「報復しない国・地域に90日間の関税一時停止を承認」との発表など、マーケットが好感するような政策の変転公表がともなっていました。
先週末5月9日についても、その後週末の米中協議の結果、週明け12日には関税の大幅な引き下げ合意を発表するなど「株買い推奨」発言が、その後の政策変転の示唆となるような格好といえました。
「株買い推奨」発言、第1期トランプ政権時からマーケットにインパクト
トランプ大統領は第1期政権時の2018年12月「クリスマスショック」と呼ばれた米政府機関の一部閉鎖や米中貿易摩擦の悪影響を懸念した株価急落後などにも旧ツイッター(現X)で株式市場を擁護するような発言を行い、対中追加関税の引き上げ延期などの緩和措置へつながるような流れを示唆していた感があります。
こう考えるとXでのつぶやきなど「株買い推奨」と受け取れる発言は、為替市場にも影響する米中関係など政策姿勢の方向性を示唆する重要なサインと捉えておくべきでしょう。
翻って検証すると4月9日の「株買い推奨」発言についてもその後、他国との貿易交渉進展の先行的なイベントとなる米英通商交渉合意が発表され、5月8日の「株買い推奨」発言後の米中関税引き下げ合意と同様に政策変転の重要な示唆となっていました。
「トランププット」とも呼ばれる第1期政権時からしばしば注目を集める「株買い推奨」発言が、為替も含めたマーケットのリスク選好を誘うパターン。足もとのドル円相場などリスク選好の影響が一時的にとどまる可能性もあるにせよ、事後のマーケットにインパクトを与える展開には今後も留意するべきでしょう。