ユニ・チャームは5月8日、社員の年収を最大で37%引き上げると発表しました。4月に人事制度を改定し、年齢や社歴にかかわらず、成果や組織への貢献度などから社員を評価するよう仕組みを整えたとしています。37%は最大限の評価を受けた場合のケースではありますが、そうでない場合も総じて評価は引き上げられる見込みで、同社社員平均では7.3%上昇するとしています。
新入社員の給料である初任給も引き上げています。学部卒は従来の21万円から2万5000円引き上げて23万5000円に、大学院卒は同22万6000円から2万4000円引き上げ25万円としました。
また、同社では「初任給変動制度」を導入しており、入社前に語学検定などで一定の成績を収めた場合などに通常の基本給に上乗せして支給しています。より詳細にいうと、MOS(Microsoft Office Specialist)の2つの試験に合格する、TOEIC850点取得で合格する、Marketing検定3級に合格する、のそれぞれで5000円基本給がアップ。3つとも合格した場合、最大で1万5000円が支給されるようになっており、入社前より自助努力を促しているようです。
最近では、スマホやタブレットには親しんでいてもパソコンはあまり使うことが少なく操作に不慣れな若者が増えている、といった指摘を見かけることがありますが、入社前に新入社員が自らスキルアップのための勉強をするようになるとその後の成長も早まりますし、給料も増えるということで、会社と社員の双方にメリットがある取り組みだなと感じます。
大幅に年収を引き上げた同社ですが、実は平均年収の推移をみてみると、ここ数年はほぼ横ばいとなっています。グラフをみるとわかるように2020年12月に840万円だったものが、2021年12月期には843万円に上昇したものの、その後2022年12月期、2023年12月期は続けて横ばいとなっています。
有価証券報告書よりDZHFR作成
843万円という水準は日本全体の平均年収458万円(令和4年分民間給与実態統計調査による)と比較すると、かなり高収入ではありますが、物価が上昇するなかで平均年収が横ばいというのでは、実質目減りしているとも言えます。
これは同社の業績も影響していると思われます。ここ数年の業績を見ると、本業のもうけを示す営業利益については、2022年12月期は減益となりました。同年は中国でロックダウンの影響があったほか、ベビーケア事業で構造改革を実施したことでコストが増加。原材料高などもあって減益となりました。
会社の業績が低調では、なかなか給料アップとはいかないものです。とはいえ、翌2023年12月期は営業増益となっただけでなく、売上高や純利益で過去最高を更新。値上げ効果などが寄与しました。今2024年12月期も増益を計画しており、直近発表になった2024年12月期1Q決算では、好調な進捗が確認できました。
冒頭で述べた大幅な年収引き上げは、こうした業績の復調もあってのことだと思われます。利益を社員に還元する姿勢を示すことで、優秀な人材を確保したいとの意図もあるでしょう。人手不足が問題視されるようになっていますが、企業が成長を持続するためにも、こうした人材への投資が今まで以上に意識されるようになっています。同社だけでなく賃上げの動きはますます広がりそうです。