パート・アルバイトにも賃上げの波
イオンは2月1日、同社グループ企業で働くパート従業員約40万人を対象に、時給を平均7%引き上げる方針を明らかにしました。
同日の日本経済新聞電子版の記事によれば、今回の賃上げは国内のスーパーやドラッグストアなど連結子会社147社で働く約40万人のパートが対象で、国内従業員の8割を占めるもようです。
今春から順次実施するされる予定で平均時給の1000円から70円程度の上昇が見込まれています。同社は全国に店舗を展開し、パート従業員の数は国内最多とみられています。これまで社員を対象にした賃上げの実施は数多く目にしましたが、パートの賃上げ、しかも前述したように国内最多と言われる同社がパートの賃上げに踏み切ったことは、非正規雇用者においても賃上げの流れが本格化する道筋の先鞭をつけたと言えるかもしれません。
賃上げ幅も4%程度となっている直近の消費者物価指数の上昇率を上回っており、パート従業員の約120万円の平均年収は約8万円底上げされる見通しです。
マイナビ社が公表している「2023年1月度アルバイト・パート平均時給レポート」によれば、同月の全国平均時給は1175円となり、前年同月比では5カ月連続で増加しています。
先ほど同社の平均時給が約1000円と言いましたが、これだ平均時給を大きく下回っており、良い人材を確保するのが難しくなるのは自明でしょう。同社では「人材を確保して現場の競争力維持につなげる」としていて、今や賃上げをしないことこそが企業の経営リスクになりつつあります。人件費の増加による利益の減少を懸念するより、大きな問題となるという意識が企業側にも浸透してきているようですね。
高水準の給与を維持
そんな同社の平均年収ですが、直近の2022年2月期では856万円となりました。国税庁の発表する「令和3年分民間給与実態統計調査」によれば、令和3年の日本の平均年収は443万円ですから、かなりの高水準と言えます。
これは同社の社員が同じく直近の期で433名前後と少なく、パートやアルバイトなどが含まれていないことが要因です。イオンは総合小売り業大手の一角を占める国内有数の企業です。傘下には総合スーパー、食品スーパー、ドラッグストアといった事業会社を持ち、さらには金融や不動産まで手がける巨大企業であり、こうした連結子会社を含む社員は15万人を超えます。これにさらに前述したパート・アルバイトの従業員が加わるのですから、本当に大きな会社ですね。
その中枢でもあるイオンは、それぞれ事業会社が適切に業務を行えるよう管理するのが仕事ですから、その分給料も高くなるということなのでしょう。ちなみに平均年収の推移を見てみると2021年2月期は830万円、2020年2月期が865万円、2019年2月期が825万円、2018年2月期が799万円と比較的安定して高水準を維持しています。
役員報酬については、2022年3月期においては、1億円以上の報酬を受け取っている役員はいません。社外役員を除いた役員報酬の総額は5億1700万円で、基本報酬が3億0900万円、ストックオプションが7400万円、業績報酬が1億3400万円となっています。対象の役員数は10名となっていますので、1人当たり平均で約5000万円ほどが報酬額となるようです。
同社は2月決算ですから、まもなく2023年2月期の決算も締めを迎える時期です。会社側は今期業績について前期からさらなる回復を見込んでいますから、好業績を支えに今春だけでなく2024年、2025年と賃上げが続いていくかもしれませんね。