串カツ田中ホールディングス<3547.T>は1月20日、ベースアップと定期昇給などを合わせて、平均4.7%、最大23%の賃上げを実施したと発表しました。
実施は2025年1月分からで、対象はグループ会社などを含む全正社員約500人で、賃上げが2022年から4年連続となります。
1月22日には、労働組合の中央組織・連合と経団連の労使トップ会談が行われ、事実上今年の春闘が開始されましたが、賃上げの流れが続くかが注目されています。
労働団体の連合は、春闘での賃上げについて、大手を含む全体では定期昇給分を含めて5%以上、中小企業の労働組合では大手との格差是正を図るため6%以上を求める方針を示しています。2024年の実績は平均賃上げ率が前年比1.52ポイント高い5.1%と、1991年以来33年ぶりに5%を上回ったことで、この流れを2025年も維持したい意向がうかがえます。
串カツ田中の賃上げ4.7%は連合の目標である5%に近い水準でもあり、このあたりを意識した部分もあったのかもしれません。
前述したように同社は4年連続で値上げを実施しましたが、それだけ賃上げの流れが浸透し高い給料でなければ人材を獲得できないからという理由が大きいです。
人件費や原材料など、あらゆる費用が高騰するなかで同社は2023年に値上げを実施しました。その結果、2023.11期、2024.11期ともに増収増益とコスト高を吸収して好業績を達成。2025.11期も増収増益を計画しています。
賃上げを行うことで、人件費はさらに増加する見込みのほか、野菜や肉などの原料価格も高騰が続いています。それでも増収増益というのはなかなか厳しい計画なのではないかと感じる面もありますが、会社側では価格改定を考慮する一方で、集客数を確保するための施策を加味するとしています。
同社では単純なセールなどのほかに他社商品とのコラボキャンペーンなどを実施することで、これまでも集客を強化する施策をとってきました。そうした企業努力のほか、やはり値上げも視野に入れることで利益を確保する方針のようです。
外食産業でいえば、マクドナルドが値上げによる影響などから、直近四半期の24.12期3Q(7-9月)決算が6四半期ぶりに営業減益となったことが話題になりました。利益を確保するために値上げをしたい。かといってそれでお客さんの数が大幅に減ってしまうようだと困る。利益と価格のバランスはいつの時代も企業にとっては難しい問題です。
同社の平均年収については、2023年11月期は518万円、2022年11月期は462万円、2021年11月期は489万円、2020年11月期は472万円、2019年11月期は466万円となっています。これはあくまでホールディングスの数値になり、全社ではまた違った数値にはなりますが、直近では500万円を超えてきているなど前述したように賃上げの効果があらわれています。
飲食業界の平均年収は一般に300万円から400万円程度が目安と言われていますので、それと比べると高い水準です。なお、飲食の年収は全業種のなかで低く抑えられがちな部分があり、実際に国税庁の民間給与実態統計調査(令和4年分)である458万円と比べると低く感じる面があるでしょう。
一般的に飲食業界は若い社員が多く、離職率が高くなる蛍光があるため、全年齢の平均にすると低くなりがち、といった事情もあるようです。それでも前述したように新入社員を含めて、賃上げをしていかないと人材を確保できなくなっているため、全体の平均も今後は上がっていくことでしょう。