三井化学は2月5日、2026年4月入社の総合職社員の初任給を24年実績から2万4000円引き上げると発表しました。大卒の場合28万円となり、従来より9.4%上がることになります。
入社が間近に迫っている2025年4月入社の社員についても、7月から同水準に引き上げるとしています。
同社では、初任給引き上げの要因について、化学業界の未来を担う優秀な若手人材の確保を目的としており、今後も人的資本投資を通じ、「VISION 2030」の実現に向けて、多様性に富んだ有為な人材を確保することで、企業価値向上に向けた変革を推進するとしています。
初任給引き上げの対象になるのは総合職で、工場などで勤務する一般職は対象とはならないようです。金額ではいずれの場合も2万4000円の引き上げで、修士修了では30万2000円(8.6%増)、博士修了は35万2000円(7.3%増)となります。
化学業界といえば、住友化学の十倉雅和会長が経団連の会長を務めており、2024年に季労使交渉(春闘)で基本給を引き上げるベースアップ(ベア)を含む合計5.5%の賃上げを実施しました。
住友化学と言えば、前期24.3期に過去最大の赤字となるなど、厳しい業績となっていますが、賃上げの旗振り役である経団連の会長を輩出している企業として3年連続でベアを実施しています。
2月3日に新社長人事を発表しており、5月に経団連会長を退任する十倉雅和会長は代表権のない取締役相談役へ、6月の株主総会で取締役も退任する予定となっていることから、業績に対する逆風が続く中で、今後の賃上げをどうするか、また注目されるところです。
一方で、三井化学の直近の業績はどうでしょうか。2月4日に発表した25.3期3Q累計(4-12月)の決算では、連結純利益(IFRS)は377億円(前年同期比1%増)と、あまり成長が確認できる内容ではありませんでした。市場の期待に届かなかったことから、発表の株価は売られる場面も見られました。
自動車向けの樹脂の販売が好調で、値上げなども浸透したことが業績に寄与しましたが、基礎科学分野ではエチレンプラントにトラブルがあった影響などが伸びを抑えたかたちです。
会社全体の平均給与はどうなっているでしょうか。有価証券報告書によれば、同社の2024年3月期の平均年間給与は864万円、2023年3月期は同892万円、2022年3月期は同839万円、2021年3月期は同838万円、2020年3月期は同848万円となってます。
国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」による平均年収が460万円であることを考えると、それなりに高い水準であることがわかります。前述したように初任給だけでなく若手の賃上げも進めていく方針とのことですから、さらにこの水準が切り上がっていく可能性があるでしょう。