日本経済新聞は1月8日、三井住友銀行が2026年4月に入行する大学新卒の初任給を月額30万円に引き上げると報じました。
記事によれば、現在は25万5000円で、4万5000円の引き上げ。引き上げ幅は18%。同社の初任給引き上げは3年ぶりとなりますが、初任給が30万円台となるのは大手銀行では初めてのことだとしています。
同社は1月14日に採用情報ページを更新。初任給を確認してみましたが、実際に30万円となっていました。初任給の引き上げに伴い、入行から数年以内の若年層らの行員の賃金も底上げするようです。
三井住友銀行をはじめ、メガバンクといわれる大手銀行では長らく給与は横並びの状態が続いていました。2000年代から10年以上、20万5000円から引き上げられないまま。同期間は長引くデフレ期間と重なっており、他行も引き上げないなかで賃上げを行うインセンティブが企業側になかったことも要因としてはあったでしょう。
そこからわずか3年の間に25万5000円に、そして30万円にと10万円近く給与が引き上げられたわけで、この間のインフレ度合いや環境の変化がいかにドラスティックなものであったかを示しているようにも思います。
三井住友銀行が初任給を30万円に引き上げたことで、ほかのメガバンクや地銀などでも引き上げの動きが広がってくるでしょう。というのも、そうしなければ人材獲得競争で後れを取ることが目に見えているからです。
銀行だけでなく、少し広い意味で金融業界を見渡してみると、第一生命は2024年入社の新入社員に対する初任給を32万円超に既に引き上げており、大和証券グループ本社も大卒の初任給を29万円から30万円に引き上げる方針が報道などで伝わっています。
大手だけでなく中堅にも同様の動きは広がっており、岡三証券は2025年4月入社の大卒初任給を30万円にすることを決めています。
賃上げを実施しなければ、みすみす前述したような企業に人材を奪われることになります。賃上げはそれだけ企業の人材獲得が難しくなっていることの証左でもあるのでしょう。銀行というと高給のイメージがありますが、実際には年次が進むまでは給料も安く抑えられ、若手のうちはあまり高くないというのが実態でしたが、こうした構造も変わってきているのだと思います。
さて、その三井住友銀行ですが、初任給に限らない全体の平均年収はいくらになるのでしょうか。三井住友銀行の有価証券報告書によれば、2024年3月期の平均年収は865万円。2023年3月期は同843万円。2022年3月期は同827万円。2021年3月期は同842万円。200年3月期は同829万円となっています。ちなみに、三井住友銀行の親会社である三井住友フィナンシャルグループの平均年収は2024年3月期で1100万円ほどとなっており、銀行より高めです。
賃上げが一気に進む金融業界では、新NISAの開始や貯蓄から投資の流れが進むほか、政策保有株の持ち合い解消や利上げのある世界など、大きな変化を迎えています。そのなかで変化に対応し、成長を持続させるためにも、優秀な人材を確保したいという要望が今までにも増して強まっていることが賃上げの加速にもつながっているのでしょう。