「楽楽精算」でおなじみのラクスが2024年1月24日、一般社員の賃上げおよび新卒初任給の引き上げを実施すると発表しました。
同社は2015年12月に当時の東証マザーズ市場(現グロース市場)に上昇。2021年に東証プライム市場へと市場変更しています。前述した楽楽清算が業績をけん引し、直近の業績である24.3期の売上高は382億9500万円(前期比39.8%増)、営業利益は53億9000万円(同3.3倍)を見込むなど非常に好調です。
その同社が実施する賃上げの内容は、年収ベース(2024年5月支給の給与より)で一般社員は平均8.5%、2024年度新入社員の初任給は約20%の大幅な引き上げとなります。
同社の発表資料によれば、同賃金改定により、月収は平均3.3%増、また賞与においても支給月数の引き上げにより平均12.0%増、年収において平均5.5%のベースアップが見込まれます。さらに定期昇給が平均3%ほどが加わり、年収ベースで平均8.5%の報酬増となる見通しとのことです。
また、先に述べたように新卒社員の初任給も引き上げされます。同社では都市手当が支給されているため地域によって若干の差がありますが、東京では従来の25万9000円(年収391万円)から30万0625円(年収479万円)と年収ベースで約20%の給与アップとなるようです。
国税庁が公表している「令和4年分 民間給与実態統計調査」における日本人の平均年収は457万6000円ですから、新入社員の時点でこれを超える水準というのは、なかなかの高給といっても良いのではないでしょうか。
それでは新入社員ではない一般社員の平均年収はどのくらいでしょうか。2023年3月期の有価証券報告書によれば、同期の平均年収は643万8000円。当然ではありますが、新卒を大きく上回る水準です。
2022年3月期については、同619万9000円、2021年3月期が同609万円、2020年3月期が同591万8000円。2020年3月期には従業員数は538名でしたが、会社の成長とともに増加し、2023年3月期には1253名にまで増加しました。この間、平均年齢は32歳前後、平均勤続年数は3年弱でほぼ変わっておらず、非常に若い会社と言う印象を受けます。従業員数が増えているため平均勤続年数が短いままであり、かつ平均年齢が下がっていないことから、中途採用が多いことが推測できます。
この点について、実は同社が賃上げを発表した1月24日付の日本経済新聞でも解説されています。同記事では、賃上げの理由について、これまで採用は即戦力となる中途人材が中心だったが、人手不足が強まるなかで「中途採用でまかないきれなくなってきた」との同社宮内貴宏取締役のコメントを掲載しています。
待遇改善で社員をつなぎ留め、外部人材を呼び込むほか、新卒採用にも力を入れる方針とのことで、2024年4月は13名(エンジニアのみ)だった新卒採用を、2025年4月は営業職など含めて35人にまで拡充する予定。2026年以降もさらに増やしていく方向で検討しているとのことです。
新卒採用の強化については、社員の平均年齢が下がり、平均勤続年数も低下することで、平均年収を押し上げる面もあるでしょう。しかし、表にもあるように右肩あがりで平均年収が伸びてることもあり、トータルでは賃金は上昇傾向が続くでしょう。戦力アップで業績の方も伸長を期待したいところです。