2024年に入って、株式市場は盛り上がっています。新NISA制度が開始されたこともあり、日経平均株価はおよそ34年ぶりに36000円台まで上昇するなど、その上昇ぶりは目覚ましいものがあります。
そんななかで、株価への先高感による業績伸長期待から、証券会社の株価も上昇基調にあり、大手の野村証券や大和証券グループ本社などは、昨年来高値を更新しつつ、上昇基調が継続しています。
その大和証券グループ本社ですが、2023年12月の日本経済新聞の記事で、中田誠司社長へのインタビューが掲載され、そのなかで25.3期に7%以上の賃上げを目指すとの内容が報じられました。
同記事によれば、対象は若手や特定の職種に限らず、管理職まで含める見込みで、新入社員の初任給は最低29万円と、24.3期の28万円からさらに引き上げを検討しているもようです。実現となれば賃上げと初任給上げは3年連続。ちなみに23.3期には平均で3.5%、24.3期は同4%引き上げたとしています。
加えて、2024年1月には、野村証券も賃上げを実施すると報じられています。4日の日本経済新聞の記事によると、同日に都内で開催された証券業界の新年名刺交換会で、野村ホールディングスの奥田健太郎社長が報道陣に明らかにしたもようです。
こちらは主に入社3年目までの若手を対象にしたもので、25.3期に賃金を平均16%引き上げるとしています。内訳としては、非管理職で平均7~8%の賃上げ、管理職を含めた国内社員全体では平均3%程度の賃上げとなる見通しとのことで、初任給も現在の24万5000円から、25.3年度には2万円程度引き上げる方針と伝わっています。
大手2社の賃上げを受けて、人材獲得競争がますます激しくなり、中堅各社にも賃上げの動きが広がってきそうです。
さて、こうした動きのなか、昨年末に先陣をきるかたちで、賃上げの方針が伝わっていた大和証券グループ本社の平均給与はどのくらいなんでしょうか。有価証券報告書により公開されている平均年間給与は、23.3期は1223万円となっています。これは国税庁が公表している「令和4年分 民間給与実態統計調査」における日本人の平均年収457万6000円と比べ、大幅に高い水準ですね。
理由はいくつかありますが、証券業界は自己勘定部門などで高い収益を上げた人を対象に成績に応じた高額のボーナスを支給する例があり、そうした一部高額の社員が平均を引き上げている部分があること。そして、もう一つはこの連載で何度か説明している内容でもありますが、同社が持株会社であり、傘下に事業会社を多数持っているため、それらを束ねる都合からマネジメント層の社員が多いことなどが挙げられます。
ちなみに23.3期末時点の同社の従業員数は491名ですが、連結子会社を含む従業員数はリテール部門5770名、ホールセール部門2525名、アセット・マネジメント部門878名、投資部門149名、さらにその他を含めて、合計1万4731名となっています。
続いて、22.3期の平均年間給与は1220万円、21.3期が同1007万円、20.3期が同1015万円、19.3期が同1057万円となっています。
ちなみに役員報酬については、23.3期は取締役(2名)の報酬総額は7600万円で1人当たり3800万円、執行役(12名)の報酬総額が10億2000万円で1人当たりでは8500万円です。執行役の報酬が高めになるのは、報酬の総額に占める業績連動型報酬や譲渡制限付き株式などの非金銭報酬の割合が高めなためで、業績連動型報酬が全体の報酬の約3分の1を占めています。
2024年は日経平均がバブル時につけた高値38915円を更新するのではとの期待も高まっています。賃上げでも証券業界が日本全体をけん引するような、そんな景気のいい話がもっと聞こえてくるよう企業も相場も盛り上がってほしいですね。