社員とアルバイトそろって賃上げ
春闘シーズンを前に前倒しで賃上げを表明する企業が相次いでいます。ユニクロを運営するファーストリテイリングをはじめ、任天堂や日本電産、サントリーHD、イオンなど、さまざまな企業が賃上げする方針を明らかにしており、停滞していた日本企業の賃金体系にも変化の兆しが見られています。
東京ディズニーランドランドやディズニーシーなどを運営するオリエンタルランドもそのうちのひとつです。
同社は1月末、ほぼすべての従業員である約2万1800人を対象に、賃金を4月1日から平均で7%程度引き上げると発表しました。これには同社の社員だけでなく、「キャスト」と呼ばれるパレードやショーなどに出演する人や運営のスタッフ、パート・アルバイトも含まれるとしています。
4月入社の新入社員に対しては、初任給を一律2万円増額し、23万8000円になるもようです。パート・アルバイトの時給は一律で80円増額しました。パート、アルバイトの時給については、2022年3月にも賃上げを実施しています。この時は一律100円の引き上げとなりました。
同社のパート・アルバイトの時給は5段階あるグレード(M↑A↑G↑I↑C)によりわけられており、最低時給で1100円、最高で1450円となっていました。前述したように今回80円引き上げられれることで1180円~1530円となったもようです。
コロナで給与は減少 人員も削減?
賃上げの実施が注目され、いくつものニュースで取り上げられた同社ですが、直近の2022年3月期の平均年収は492万円。2021年3月期は451万円でした。
国税庁の発表する「令和3年分 民間給与実態統計調査」によれば、令和3年の日本の平均年収は443万円ですから、これをわずかに上回る水準です。ですが、日本を代表するテーマパークを運営する会社の給料として考えると思っていたよりも高くないな、という印象を持つ方もいるかもしれませんね。
この年収ですが、実は2020年3月期には、平均年収は709万円ありましたし、その前年の2019年3月期には697万円となっていました。2020年3月期から2021年3月期に間に一気に258万円も平均年収が激減していることになります。
なにがあったかはもう説明するまでもないと思いますが、この時期はコロナでディズニーランドやディズニーシーなどのテーマパークも臨時休園を余儀なくされた時期です。2019年3月に903億円だった同社の純利益は、2020年3月期には622億円に減少。2021年3月期には542億円の赤字と非常に厳しい業績となりました。
この間、グラフを見てみると、従業員数については増加が続いているように見えますが、これはあくまで正社員の数です。連結子会社におけるパート・アルバイトなどの平均臨時雇用者数(総労働時間を社員換算して算出)は、2019年3月期に2万人近い数だったものが、2020年3月期には約1万8000人に、翌2021年3月期には約8000人にまで減少しました。
臨時雇用者については2022年3月期になっても約9000人とまだ回復は途上です。パークの運営は平常に戻りつつありますが、人材が戻ってくるにはまだ時間がかかるかもしれません。2022年、2023年と続けざまにパート・アルバイトの賃上げを実施したのも、少しでも人材を取り戻したいからなのかもしれません。
業績については2023年3月期については、会社計画で純利益681億円と2020年3月期を上回る水準まで回復する見込みです。給与に関してもコロナ前の水準を回復するだけでなく、賃上げもあることですから、さらに上回るぐらいになっていくかもしれませんね。