AZ-COM丸和ホールディングスは9月25日、同社の設立50周年を記念し、役員やトラック運転手など従業員を対象に、和佐見勝社長が所有する個人資産から総額50億円超を贈与すると発表しました。
同社では「1973年の設立以来、当社発展のために尽力し、共に働いてきた従業員および役員への感謝の意を表し、さらなる業績の向上および企業価値の最大化への意欲を一層高めるため」と狙いを説明しています。
対象は役職員約5000人のほか、パート従業員約1万人も含まれており、総計で約1万5000人にのぼる予定。今後の新規採用や、M&Aで新たに同社グループ入りする企業も対象にするとのことで、対象者はさらに増える見込みとしています。
今年12月から分割して実施される予定で、額は正社員で最大100万円、パート従業員は同5万円が現金で支給されるとのこと。同社で働く人たちにとっては嬉しいボーナスとなりそうですね。
実は、同社が、というよりも同社の和佐見社長が社員へ個人資産を贈与するのは今回が初めてではありません。これまでに2018年に約5億2000万円相当の保有株式、20年には現金10億円をそれぞれ支給しており、今回で3回目となっています。非常に珍しい例だと言って良いでしょう。
そんな同社ですが、どんな企業かというと、小売り向けの物流サービスを手がける会社です。アマゾンジャパンの配送業務を受託していることでも知られており、ネット通販の伸びに併せて大きく業績を拡大させてきました。
もともとの同社の規模だけでは、ネット通販需要の拡大に追いつけない面もあり、AZ-COMネットを設立。中小のトラック運送事業者を中心とする会員制のネットワークを形成することで、需要の伸びに対応するほか、経営改善研修や配車担当者・ドライバー向け教育をはじめ、ETC大口多頻度割引サービス、トラックや燃料などの割引販売、運輸倉庫関連商材を安価に提供する共同購入サイトの提供を通じて、会員企業をサポートする取り組みなどを実施しています。
加えて、近年はM&Aなども実施することで事業規模を拡大してきました。直近の23.3期連結売上高は1778億円、同営業利益は114億円となっています。
そんな同社の平均給与ですが、2019年3月期に年間443万円だったのが、直近の2023年3月期には743万円に急増しました。一方で従業員は同1321人から57人と激減しています。
グラフを見ても、2022年から2023年にかけての傾きが急になっていることがおわかりいただけると思います。これは同社が2022年10月1日付けで持株会社体制に移行したため、直近の2023年3月期については、その持株会社の給与になっているからですね。連続性という意味では、持株会社制に移行したことで少しわかりにくくなってしまいました。
ちなみに、なぜ持株会社性に移行すると平均給与が上昇するかというと、事業会社と別に会社の経営判断や意思決定を行う部署が中核となり、勤続年数も長い社員が増えることなどが要因として挙げられます。現場で働いているドライバーの方の平均給与という意味では、2022年3月期までの数字の方がより実態をあらわしていると言えるかもしれません。
2019年3月期の平均給与443万円は、国税庁が発表している「民間給与実態統計調査(令和3年分)」の平均給与所得は443万円と同水準であり、給与は高くも低くもないと言えるかもしれません。
また、全日本トラック協会が842社を対象に行ったトラック運送事業の賃金・労働時間等の実態
(2021年度版)によると、平均賃金は賞与込みで年間429万円ほどとなっています。同社の2021年3月期の平均給与457万円と比べると、同社のほうが少し高い水準と言えそうです。
ここからは少し余談となりますが、上記トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態によると、運送会社のなかでも、ドライバーの賃金を別で見た場合は、平均給与は494万円となり、前述した金額よりも高額になります。
運送会社の中核でもあるドライバーは、職種別で見た場合には会社の中でも高給であるということですね。さらに中型車や大型車などでも水準は変わり、より大型で専門的な技術が必要なドライバーほど高給になるようです。
物流業界では今、働き方改革関連法の施行により、時間外労働時間などがより厳しく規制され、物を運ぶ能力が足りなくなる「2024年問題」が指摘されています。これらの問題も、今後ドライバーの給与に影響を及ぼすことになるかもしれません。同社では、平均給与は年々上昇傾向にありますが、それがどう変わるかも気になるところです。