英語コーチング「プログリット(PROGRIT)」を展開しているプログリット(東京都千代田区)は、2023年8月末、9月1日より、英語コーチングサービスの英語コンサルタント、カウンセラーなど、約120名を対象に、人的資本経営推進の一環として一律で年50万円の給与の引き上げを実施すると発表しました。
プログリット社の設立は2016年。顧客一人ひとりを専任のコンサルタントが担当し、12週間プランを中心とした短期間で英語力を伸ばす英語コーチングサービスを提供しています。
これまで1万5000名を超える利用がおり、2023年8月現在、有楽町、新宿センタービル、渋谷、神田秋葉原、六本木、池袋、横浜、名古屋、阪急梅田の9校舎を展開しているほか、校舎の無い地域や海外からの受講にも対応するためにオンラインコースを開講しています。
2022年9月に上場したことによる認知度向上やサービス内容に対する評価などから、プログリットの利用者は直近でも大幅に増加。業績も好調で、4月には23.8期通期決算を上方修正していますが、7月に発表になった3Q累計決算では純利益が同時点でほぼ通期計画を達成する水準まで進捗しており、同社サービスに対する高い評価を示していると言えるでしょう。
好調の要因はそのビジネスモデルにあります。従来の英語教室のように「英語を教える」のではなく、英語を学ぶための最適な方法を提案し、学習継続を支援するコーチングを行っている点が最大の特徴で、毎日のチャットサポートや週に1回の振り返り面談、アプリでの学習管理など、英語学習を途中で投げ出さず、最後までやり遂げられるようにさまざまな角度から利用者を徹底サポートしています。
それだけに、講師はただ教室で英語のテキストを読んでいるだけでは務まりません。利用者ごとに最適な内容を見極め、継続的な学習を促すことができる高いコーチングスキルが必要になります。50万の給与アップ×120人ですから、会社側としては年間で6000万円のコスト増ということになりますが、それにより優秀な人材を確保することが、さらなる企業の成長のために必要なことだったと考えての昇給だったでしょう。
そんな同社の平均年収ですが、まだ昨年上場したばかりの会社ということで、開示されている有価証券報告書は上場申請時のときのものだけです。それによると従業員数は141名。平均年収は471万円。平均年齢は30.3歳となっています。
同社の業種はサービス業になります。パーソルキャリア社が公表している業種別平均年収データ(21年9月~22年8月の平均値)によると、サービス業界の平均年収は366万円となっています。また、サービス業界を分類ごとに見ると、「教育/学校」の年収は平均360万円となっているようです。
パーソルキャリア社が公表しているサービス業の平均と比べるとと高い水準ですね。同社は設立直後から英語業界では非常に珍しかった全員正社員雇用を決め、報酬も業界水準を超えるレベルに設定していたようです。
こうした取り組みは優秀な人材を採用するためでもありますが、投資家の目線では、それにより企業としての利益が下がってしまうようだと投資先としての魅力は薄れてしまう、という見方もあるかと思います。しかし、同社では、前述したようにしっかりと利益も増加しています。
高い給料と利益を両立させている要因は、値上げにあります。同社では創業以来3度の値上げを実施しています。2016年の創業時に45万円だった料金は、2023年に55万円にまで値上げされていますが、それでも受講者は増加しており、サービス品質の高さが認められている証であると言えるでしょう。
今回の給与引き上げにより、同社にさらに優秀な人材が集まるのか、サービスの品質はどのように変わるのか、そして業績にはどのように影響するのか。そうした点も含め、今後も同社の給与の推移に注目してみたいと思います。