アサヒビールが賃上げを実施するもようです。日本経済新聞電子版は1月27日、同社が2025年春に、基本給を一律で底上げするベースアップ(ベア)を含む約7%の賃上げを目指すと報じました。
7%の水準は前年の2024年の実績(ベア月1万3500円、定昇と合わせて6%の賃上げ)を上回る水準で、ベアの実施は3年連続となる見込みです。また、これは連合が賃上げで求めている「5%以上」も上回ります。
実際には今年の春季労使交渉で具体的な引き上げ幅などを交渉することになりますが、春闘が始まる前からすでに大幅な賃上げの方針が会社から示されたというのは、会社から従業員への本気で賃上げをしていきますよというメッセージと受け止めていいでしょう。
日本経済新聞の記事によれば、25年4月に入社する新入社員の初任給も現在の27万3500円から引き上げる方針とのことです。新入社員だけでなく若手社員の待遇も手厚くするもようで、2024年は32歳以下の社員を対象に、最大でベア月1万7000円を実施しています。前述したように全社員向けは1万3500円とされていたわけですから、若手社員ほどベースアップの幅が大きかったわけですね。
また、好調な業績を受けて、2024年12月には特別一時金として5万円を支給しています。こちらは正社員だけでなく、契約社員や派遣社員も含めた約4500人を対象にしています。
賃金だけでなくキャリアアップ支援にも注力しており、若手だけでなく既存の全社員を対象に新たな研修プログラムを2025年4月から開始する予定とのことです。研修に充てる予算は前年比で4倍となるもようで、会社にとっては費用増ということになりますが、こうして社員への支援体制を手厚くすることが今まで以上に人材確保のために重要になっていると言えるでしょう。
ビール業界では、サントリーホールディングスが2024年の9月という早い段階で、2025年にも7%程度の賃上げを目指す方針を明らかにしていました。これほど早い段階での方針表明は、同社の新浪剛史社長が経済同友会の代表幹事も務めていることから、企業全体に物価高を上回る賃上げの動きを定着させていこうという意思を示す部分もあってのことだと思います。ですが、それだけでなく他社より早く賃上げの姿勢を見せることで人材獲得で有利な位置を確保しようという狙いもあったと個人的には思います。
さて、競争激しいビール業界ですが、アサヒビールを傘下に持つアサヒグループホールディングスの平均年収はどうなっているのでしょうか。
有価証券報告書によると、2023年12月期の平均年収は1233万円。2022年12月期は同1230万円。2021年12月期は同1115万円。2020年12月期は同1325万円。2019年12月期は同1250万円となっています。
前述したサントリーHDの2023年12月期の平均年収は、こちらも有価証券報告書によれば1133万円。そして、同業大手のキリンHDは2023年12月期の平均年収は957万円ですので、アサヒグループHDの平均年収はそのなかでも高めと言えるかもしれません。