2000年以降で最大の賃上げ
日本経済新聞電子版は3月13日、キッコーマンが2023年の春季労使交渉で基本給を底上げするベースアップ(ベア)について月額1万円とすることで労働組合と妥結したと報じました。
記事によれば、10日に妥結されたとのことで、組合の要求(9000円)を1000円上回るもようです。定期昇給などを合わせた賃上げ率は組合員平均で5.24%となりました。
同記事によれば、組合要求を上回る回答は珍しいとのことですが、賃上げ率は連合の求める5%を上回る水準が意識されたものと推察します。
金額は2000年以降では最大となったようで、キッコーマンは「物価上昇を踏まえ企業としての社会的責務を果たし、経済の好循環につなげるため要求を超える水準を決めた」とコメントしています。
併せて、パート100人の時給も70円引き上げました。増額は2年連続。こちらも組合要求の60円を上回っています。
キッコーマンといえば、しょうゆ最大手で、海外でしょうゆや調味料販売が非常に伸びていることでも知られています。
2023年3月期の売上高については5967億円、同純利益は407億円を計画。同社は2020年3月期に国際会計基準に移行しており、同会計基準での比較では2020年3月期の売上高4396億円に対し35.7%増、同純利益268億円に対しては51.9%増と大幅な業績の伸びを見込んでいます。
平均年収は高水準で安定
平均年収は2022年3月期が787万円となっているほか、その他の年についても、2018年3月期は808万円、2019年3月期が797万円、2020年3月期が796万円、2021年3月期が777万円で、国税庁の発表する「令和3年分 民間給与実態統計調査」における、令和3年の日本の平均年収は443万円を大幅に上回る高水準となっています。
平均年収は賞与込みの額ですが、2022年3月期の従業員賞与の額が約9億円となっていますので、従業員約500名とすると1人当たりの平均は180万円程度となります。
また、役員報酬は取締役12名の合計が4億7500万円であることから1人当たりの平均は約4000万円となります。このうち基本報酬が4分の3、賞与が4分の1で、それぞれに業績連動部分があるかたちです。
キッコーマンほどの会社で役員報酬が4000万円程度というのは意外に少ないような印象も受けますが、それは外国人役員がいないからかもしれません。2022年6月時点で執行役員待遇の取締役が1名いるようですが、それ以外はすべて日本人役員です。
一般に給与体系は海外の方が高い傾向があり、外国人役員が日本人社長より高い給与をもらっているという会社も少なくありません。同社は売り上げ、営業利益ともに過半を海外で稼ぎ出すグローバル企業であることを考えると、外国人役員がいないことは不思議な気もしますが、そこはしょうゆという日本独自の商品を取り扱っていること、また海外子会社ではなくあくまでホールディングスの役員であることなども関係しているのかもしれません。