各銀行で賃上げの動きが広がる
金融機関の賃上げが相次いでいます。三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱UFJ銀行は、2024年春に入社する総合職の初任給を5万円引き上げることを決めました。春季労使交渉で会社側が3月27日、従業員組合に明らかにしたもので、従来の20万5000円から25万5000円となります
同日の日本経済新聞の記事によれば、既存の従業員に対しても昇格や登用、一時金を踏まえた実質値で平均7%を超える賃上げを実施したもようです。
また、みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ銀行とみずほ信託銀行も同日、基本給を底上げするベースアップ2.5%の実施を組合側へ伝えたと報じられました。三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友銀行も29日、2.5%のベアを決め、従業員組合の要求に満額回答したもようです。
3メガバンクがそろって賃上げを進めるなかで、同様の動きは他行にも広がっており、インターネット専業銀行の住信SBIネット銀行では、2023年4月の新卒入社を対象に、初任給を8万円引き上げ30万円としたようです。大手行を上回る給与水準とすることで人材獲得競争に打ち勝つ方針と思われます。
今回はメガバンクの一角である三菱UFJ銀行とネット銀行の住信SBIネット銀行の給与を比較しつつ、その中身を見ていきたいと思います。
三菱UFJ銀行と住信SBI銀行の平均給与の推移(万円)
まずは三菱UFJ銀行の平均給与を見てみましょう。こちらは三菱UFJフィナンシャル・グループではなく、傘下の三菱UFJ銀行の数字となります。
同社の平均収入はここ数年安定して770万円台で推移しています。コロナの時も、その前も後も給与に大きな変化はありません。とはいえ、大企業なだけにコロナの影響もなく安定した給与が約束されている、というわけであはりません。給与の方に変化はありませんが、連結従業員の数をみると、2018年3月期に3万4000人を超えていたのが、2022年3月期には29000人を割り込む水準まで減少しています。率にして約15%の減少です。
対する住信SBIネット銀行の平均給与は2018年3月期に610万円となっていましたが、2022年3月期には724万円にまで上昇。4年間で約18%の給与上昇となっています。給与額そのものは三菱UFJの水準には及びませんが、伸びは上回っていることがわかります。
これは三菱UFJ銀行が国内3メガバンクの一角を占める成熟企業であるのに対し、住信SBIはインターネット専業銀行という、いまもなお成長が続いている業態であることも影響しているでしょう。
役員報酬についてはどうでしょうか。三菱UFJ銀行の取締役(監査等委員、社外役員を除く)22名の役員報酬の総額は12億1700万円。1人当たりにすると5500万円ほどとなります。これは基本報酬が約4割、株式報酬が2割弱、残りが業績連動による金銭報酬と株式報酬となっています。
住信SBIネット銀行の役員報酬は取締役4名に対し1億3000万円ほど。1人当たりでは3250万円です。こちらはすべて固定報酬となっており、業績連動や株式報酬などはありません。
銀行の給与はどこも似たりよったり、というイメージがありますが、こうして比べてみると両行には結構違いがあるのがわかりました。前述したように賃上げについても今後動きが広がっていくでしょうし、人材獲得競争がますます激しくなっていけば、各行の給与体系も今よりもっと変化してくるかもしれませんね。