9月初旬にSNSのX(旧Twitter)上で、ある噂話が拡散されました。それは伊藤忠商事が社員の給与を大幅に引き上げるというものでした。等級によっても異なりますが、一番低いものでも年収は2000万円を超えるとされていました。
さすが日本5大商社のなかでもトップクラスの伊藤忠商事だなと感じさせる内容でしたが、その拡散された話は社内文書とみられる画像はあったものの、実際に伊藤忠商事から公表されたものではなく、あくまで噂話だろうと受け止めていました。
ですが、実際にはその噂話は一部なりとも現実のものであった可能性が出てきました。日本経済新聞電子版は5日、同社が社員の年収を大幅に引き上げると報じました。
記事によれば、岡藤正広・会長最高経営責任者(CEO)の名前による年収見直しに関する社内文書がXに流出。これを受けて、伊藤忠商事の広報担当者は「内容は事実」としつつ「現在労働組合と交渉中だが、交渉終了時期は不透明」とコメントしたもようです。
細かな条件などもあるもようで、25.3期の連結純利益において、会社計画である8800億円を達成した場合、社員平均の26.3期の年収は25.3期見込みに比べて10%増となるとしています。
また、実力のある社員には変動給でも一段と報いるとしており、課長代行は25年度(成績優秀の場合)で2970万円と、現行制度による24年度の年収見込み2550万円から増える。課長で3620万円(24年度見込みで3090万円)、部長ではなんと4110万円(同3500万円)となります。
余談ですが、日本の内閣総理大臣の年収は、「特別職の職員の給与に関する法律」で定められており約4000万。国務大臣で同3000万円ですから、どれほど高い水準かわかるというものです。
なお、昇給については、基本給を底上げするベースアップ(ベア)に加え、自社株式による株式報奨も組み合わせた制度として実施する方針で、同業の三菱商事や三井物産に肩を並べる水準の制度に改定することで「日本経済界でも突出した高給」とする狙いがあると記事では結んでいます。
直近の有価証券報告書によれば、総合商社大手の平均年収は三菱商事が2090万円でトップ。2位が三井物産の1899万円で、3位が住友商事の1758万円。その次にようやく伊藤忠商事が1753万円と続くかたちとなっています。
過去5年の推移を見た場合では、24.3期が上記として、23.3期が同1730万円、22.3期が1579万円、21.3期が1627万円、20.3期が1665万円となっています。こうしてみるとコロナ禍はともかく、直近2年は上昇傾向にあったようです。
前述したように、今後はさらに水準が引き上げられるとみられているわけですが、これらの動きは人材獲得競争が影響していることと無関係ではないでしょう。総合商社同士での競争はもちろん、同様に好報酬で就活生からの人気も高いコンサルティング業界などとも渡り合って、優秀な人材を確保していかなければなりません。そのためにも思い切った報酬改定を打ち出す必要があったのでしょうね。人手不足による賃上げの傾向はまだまだ続きそうです。