「もし自分が亡くなったら、株や投資信託などの相続はどうなるのだろう」と考えたことがある方が多いのではないでしょうか。
株・投資信託などの有価証券は、①相続人が相続して運用を続ける、②一度相続人が相続してから売却するという2つの方法があります。
相続税の課税対象で、評価方法は「財産評価基本通達」により定められています。
今回は株や投資信託の相続と評価方法について解説していきます。
株や投資信託は自分が亡くなったらどうなる?
株や投資信託・債券などの有価証券は自身が亡くなったらどうなるのでしょうか?
遺言書がない場合は相続人全員が遺産分割協議で相談して決めることになります。遺言書がある場合は、基本的に遺言書どおりの内容で相続します。
ただし相続人の遺留分(遺族の最低限の取り分)を侵害したなどの理由により、遺産分割協議で相続人全員が合意している場合には遺言書どおりの相続でなくても構いません。
株式を資産運用のために保有している場合には、上場株式や投資信託などが多いでしょう。
有価証券の相続は、相続人がそのまま相続する「現物分割」と売却して換金し、代金を分ける「換価分割」があります。株式を共有名義にする場合は、会社法106条で「当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない」と定められています。
基本的に共有名義は不動産も含めて後のトラブルが起こりやすいため、回避した方が良いでしょう。
会社を経営しており非上場株式を持っているケースもありますが、今回は除外します。
有価証券の相続について、①相続の方法と手続き②評価方法について解説してきます。
有価証券の相続は現物分割と換価分割
有価証券の相続は相続人が現物のまま相続する現物分割と、一度相続した後に売却して代金を分ける換価分割があります。
1.相続人が有価証券を相続する
相続人が被相続人(亡くなった方)の株や投資信託を受け継ぎます。
相続人が証券会社に口座を持っていない場合にはまず口座を開設します。
遺言書で相続する人・銘柄・数量を指定、または遺産分割協議で相続人全員が話し合い決める必要があります。
株や投資信託の評価額や保有量によっては、各相続人の相続割合に応じた分割が難しくなるでしょう。その場合は現金など他の相続財産で調整します。
相続人に資産運用の知識が無く、相続を希望しないケースもあります。よって相続させたい場合には元気なうちに推定相続人(相続人となる予定の方)と話し合っておきましょう。
相続の手続きは、証券会社に必要書類を提出し名義を被相続人から相続人に変更します。
現物分割のメリットは、含み益のある株・投資信託をそのまま引き継がせることができる、売却の手間が生じない点です。
ただし株や投資信託・不動産のような実物資産は、公平に分けにくいというデメリットがあります。特に日本株は100株で1単元ですので、分割すると単元未満株になってしまい株主優待を受けられない、株主としての権利を行使できないなどの事態が想定されます。
また、相続時点の銘柄の価額(含み益・含み損)や将来性などで、相続人同士のトラブルが生じる可能性があります。
2.売却して換価分割する
株式や投資信託を売却し、代金を分割する方法です。
基本的に有価証券は、証券会社で移管手続きを行い相続人に名義変更をしてから売却します。相続人は被相続人の口座がある証券会社に問い合わせ、必要書類を確認し手続きをします。
現物分割と違い公平に分けやすく相続人同士のトラブルが起こりにくいというメリットがあります。
一方で、相続時の評価額によっては損をしてしまう可能性があります。
なお売却時に利益が生じた際には譲渡所得税が課されます。特定口座で源泉徴収ありの場合には、確定申告は不要です。
譲渡所得は以下の式で計算します。
売却した金額―(取得費 + 売却にかかった費用)
取得費とは、株式の購入にかかった費用で購入費用に手数料を加えたものです。売却にかかる手数料も差し引くことができます。
相続の場合は一定の要件を満たすと「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」により、相続税のうち一定の金額を、譲渡した株の取得費に加算することが可能です。
株式・投資信託の評価方法は?
上場株式は、以下4つのうち最も低い価額で評価します。
1. 相続が開始した日(被相続人が亡くなった日)の終値
2. 相続が開始した月の毎日の最終価格の月平均額
3. 相続が開始した月の前月の毎日の最終価格の月平均額
4. 相続が開始した月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
被相続人が亡くなった日が土日・祝の場合、前日より前または翌日より後の終値のうち最も近い日の終値を採用します。
例えば土曜日に相続が開始した場合は金曜日の終値です。
投資信託は種類や仕組みによって評価方法が異なりますが、基本的に基準価額をもとに計算します。
元気なうちに推定相続人と相談を
株や投資信託を保有している方は、元気なうちに将来相続人となる予定の「推定相続人」と話し合い「自分が亡くなった後にどうしたいか」を聞いておきましょう。
推定相続人が投資知識や興味が無い場合には売却して現金化しておくことも検討しましょう。