「将来受け取る年金を増やしたい」「60歳から年金を増やす方法は?」とお考えの方は多いでしょう。現役世代の方はまずiDeCoなど私的年金への加入を検討してみましょう。60代で公的年金の受給額を増やすためには、繰り下げ受給・一定の要件を満たす60歳以上の方が国民年金に任意加入するなどの方法があります。
本記事では日本の年金制度について、年金受給額の増やし方4つをお伝えしていきます。
日本の年金制度とは
まずは日本の年金制度について改めて知っておきましょう。日本の年金制度は、2階建て又は3階建てとなっており国民年金は日本に居住する20歳以上60歳未満の全ての人が加入する「1階部分」です。
出典:厚生労働省
自営業者・学生など第1号被保険者・会社員・公務員など給与所得者である第2号被保険者、専業主婦(夫)の第3号被保険者、全ての人が国民年金に加入します。
第2号被保険者に扶養されている第3号被保険者は第2号被保険者の勤務先を通じて加入し、自己負担はありません。
2階部分である厚生年金保険は第2号被保険者が加入し、保険料は勤務先と折半です。確定給付企業年金(DB)・確定拠出年金(企業型DC)に加入必須で、3階建てである企業も存在します。
国民年金は老齢基礎年金、厚生年金は老齢厚生年金として将来受給することになります。
第1号被保険者は、国民年金だけでは将来の受給額が少ないため国民年金基金やidecoなどに加入し将来に備える方が多いです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、原則20歳以上65歳未満の全ての方が任意で加入できる私的年金制度です。自身で加入手続きを行い、掛け金を支払い運用します。掛け金が全額所得控除になる、運用益に対しての20.315%の課税がiDeCoなら非課税で再投資されるなどの税制優遇があります。
将来受け取る年金を増やすためには、iDeCoのような私的年金の加入の他に3つの方法があります。
将来受け取る年金の増やし方4つ
1.繰り下げ受給
老齢基礎(厚生)年金は基本的に65歳から受給しますが、繰り下げ受給を申請する事で受給額を最大84%増やすことができます。受給額は繰り下げた期間によって異なりますが、増額率は生涯変わりません。
以下の式で計算します。
増額率=0.7%×65歳の誕生日の前日が属する月から繰り下げ申請月の前月までの月数
65歳の誕生日の「前日」が属する月という点に気を付けましょう。例えば1954年3月1日生まれの方が2022年10月に繰り下げ受給を申請した場合は、2019年2月(65歳の誕生日の前日が属する月)から2022年9月(繰り下げ申請月の前月)までの42ヶ月間が増額の対象となります。
0.7%×42ヶ月=29.4%
増額率は29.4です。
なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることが可能です。
ただし、1952年4月1日以前生まれの方(または20179年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が生じる方)は改正前の増額率が適用されます。繰り下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなり、増額率は最大で42%ですので注意しましょう。
2.60歳以降の国民年金任意加入
国民年金は20歳から60歳まで保険料を納めますが、納付期間が40年に満たない、老齢基礎年金の受給資格を満たしておらず年金額を増やしたい方は、一定の要件を満たす場合は60歳以降に国民年金に任意加入が可能です。ただし、厚生年金保険・共済組合加入者は除外されます。
日本年金機構のホームページには、以下の5点すべてを満たす方が任意加入可能と記載されています。
1. 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方
2. 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方
3. 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満の方
4. 厚生年金保険、共済組合等に加入していない方
5. 日本国籍を有しない方で、在留資格が「特定活動(医療滞在または医療滞在者の付添人)」や「特定活動(観光・保養等を目的とする長期滞在または長期滞在者の同行配偶者)」で滞在する方ではない方
上記に加え、年金の受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満の方、外国に居住する日本人で、20歳以上65歳未満の方も任意加入が可能です。
3.付加年金
自加年金営業者・個人事業主・学生など第1号被保険者の方、上記の任意加入被保険者で65歳未満の方は付加年金を納め年金受給額を増やす事ができます。
付加保険料は月額400円で、付加年金額は「200円×付加保険料納付月数」で計算します。付加年金額を2年以上受け取ることで、支払った付加保険料以上の年金が受給でき「元が取れる」計算となります。
4.私的年金への加入
iDeCo や国民年金基金など私的年金に加入し、受給額を増やす方法です。国民年金基金は日本に住む20歳以上60歳未満の自営業者と家族・フリーランス・学生など第1号被保険者が加入できます。加えて60歳以上65歳未満の方、海外に居住されている方で国民年金に任意加入している方が加入できます。
国民年金基金は自身で運用できず加入した時点で受け取る金額が決まっている「確定給付年金」であることがiDeCo (個人型確定拠出年金)との大きな違いです。
国民年金基金の2022年9月時点の予定利率は1.5%であり、日本銀行では年2%の物価上昇を目標としていますのでインフレに対応できないリスクがあります。
しかし、加入時に給付金額が決まっていることに安心感を抱く方、自身での運用を希望しない方には適しているでしょう。掛け金は全額所得控除が可能で、1口目は一生涯受け取れる終身年金に加入することが義務付けられています。
iDeCoは自身で掛け金を運用する制度で、税制優遇がある、運用がうまくいった場合はリターンが大きい点がメリットです。国民年金基金と異なり基本的に5年以上20年以下の期間で受け取りますが、SBI証券で運用している方は「第一のつみたて年金保険」にスイッチング(預け替え)することで終身年金として受け取る事ができます。
まとめ
日本の年金制度と年金受給額の増やし方4つについてお伝えしました。現役世代は私的年金への加入、65歳以降は繰り下げ受給、60歳以降は国民年金への任意加入や付加年金で年金受給額を増やしていきましょう。