日々是売買~トレードへの道

第119回「日本の『トリプル高(株高・債券高・通貨高)』は続くのか」

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ドル円、戻り売り優勢 衆院選後は「トリプル高」

 

ドル円は8日の衆院選前までは6日続伸し1月27日の152.10円(昨年10月29日以来の安値)から157円台まで値を戻していましたが、今週は一転下落する展開となりました。8日に行われた衆院選で自民党は小選挙区249、比例代表67の合計316議席を獲得、連立与党の日本維新の会は36議席を獲得し、歴史的な勝利を収めました。この結果を受けて、週明けのオセアニア市場では一時157.76円まで上昇しましたが、東京時間に入り三村財務官から「市場を高い緊張感を持って注視している」との発言が伝わると失速しました。

 

また、米労働省が11日発表した1月米雇用統計では非農業部門雇用者数が13.0万人増と予想の7.0万人増を上回り、失業率が4.3%と予想の4.4%より強い結果となったにもかかわらず、ドル円の上昇は一時的(瞬間的!?)。米景気への警戒感は根強くドル買いは続かなかったこともありますが、主な理由は「衆議院選挙での自民党圧勝を受けて、高市政権が財政規律に配慮するのではとの観測から円買いが入りやすい」との見方も。12日の東京市場では152.27円まで値を下げています。

 

*Trading Viewより

 

米労働省が13日発表した1月米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったこともあり、米10年債利回りは一時4.0445%前後と昨年12月3日以来の低水準を更新。ドル円も152.60円まで売られるなど、上値の重い展開となり、結局5日続落と今週は1日も上昇しない1週間となりました。

 

当初、総選挙で自民党が勝利すれば高市トレード(株買い・円売り・債券売り)が進む」との見方が支配的でした。「高市トレード」とは「株価が上昇して長期国債価格が下落(長期金利が上昇)、円安が進行」することを言います。多くのエコノミストや評論家、メディアは高市トレードについて、株高を肯定的に報じる一方、財政拡張的な政策が「放漫財政」を招く可能性や、過度な円安・債券安といった「リスク」を挙って強調。個人的には“意地悪な”論調との印象を受ける中、自分自身も総選挙前は「株高・債券安・通貨安」が進みそうだと思っていました。

 

ただ、衆院選後の今週1週間は日本株、債券、円が全て買われる「トリプル高」に。高市トレードの巻き戻しと言える部分もありますが、ただのポジション調整の動きだけではないように思います。「投資家らは事前の予想をはるかにしのぐ形で高市早苗首相率いる自民党が圧勝し、投資家は政治の安定化だけではなく、経済の強化にもつながると期待している」との声が聞かれているだけに、自民党圧勝が株高・債券高・通貨高につながった面もあるようです。特に債券については「自民党圧勝で財政支出がむしろ抑制され、市場にも配慮することが可能になった」との見方が広がっているといいます。

 

 

 

投機筋の円売りポジション、ほぼ横ばい

 

米商品先物取引委員会(CFTC) が13日(日本時間14日早朝)に発表した2月10日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は1万9106枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、前週から116枚減少しました。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

投機筋の円のポジションは昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが優勢となり、4月29日には17万9212枚と過去最大を更新しています。ただ、それ以降はその動きが反転し、再び円売りポジションが傾いています。

 

 

 

ドル円の一目均衡表チャートを見ると

 

ドル円の一目均衡表チャートを見ると、週末の終値(152.70円)雲(上限:156.61円、下限:155.17円)基準線(155.77円)転換線(155.01円)を再び下回っています。1月27日の安値152.10円でひとまず底を確認し、いったんはこれら全て上回りましたが、再び全て下抜けてしまっています。今後はテクニカル的に売りが出やすい状況です。仮に1月27日の安値152.10円を下抜けた場合はさらに下値を探る展開が予想されます。

 

*Trading Viewより

 

なお、日本株について米ゴールドマン・サックス・グループは13日に日本株の投資判断を従来の「マーケットウエート」から「オーバーウエート」に引き上げたと伝わっています。「企業業績見通しの改善が続いているうえ、選挙結果はより高いバリュエーションを正当化する」としています。


*Trading Viewより

 

動きが難しいのは為替。市場では「これまでの流れであれば、為替市場でも円安になるはずが、実際は円高に振れている。非常に不思議な動き」との声が相次いでいます。潜在的なドル需要が意識される中、中期的には円安・ドル高が続くとの見方は多いですが、本邦当局者からは執拗なほど、「円安けん制発言」が伝わっており、テクニカル的な要因とあわせてここからさらに円高・ドル安方向へ振れる可能性も否定できません。今週の動きが本当にポジション調整の動きだったのか、それとも今後は日本の「トリプル高」が新たなトレンドとなり、この動きが続いていくのかを確認するまではなかなかポジションが取りづらい状況となっています。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第119回「日本の『トリプル高(株高・債券高・通貨高)』は続くのか」
第118回「日経平均先物、夜間取引で2000円高の急騰 自民圧勝期待で」
第117回「為替介入は『なし』、ドル円急落はレートチェック」
第116回「日米当局、レートチェック お上に逆らうな(為替介入)」
第115回「ドル円、衆院解散で160円突破か!?」
第114回「ドル円、1年ぶり高値 衆院解散を検討との報道」
第113回「ドル円、2026年上昇予想が増加」
第112回「ドル円、年初来高値158.87円が視野」
第111回「来週はいよいよ日銀金融政策決定会合」
第110回「米感謝祭ウィークで商いは低調 来週に期待」
第109回「ドル円、10カ月ぶり高値 利上げや介入への警戒高まる」
第108回「米利下げ確率、1カ月前の94.4%から45.8%まで低下」
第107回「高市トレード(円売り・株買い)継続」
第106回「終わってみればサナエノミクス」
第105回「VIX(恐怖指数)、半年ぶりの高水準を更新」
第104回「忘れた頃にやってくるトランプ砲、でもTACOか?」
第103回「米政府機関の一部閉鎖で投機筋ポジション発表されず」
第102回「ドル円、ついにレンジをブレイクか!?」
第101回「サナエノミクス!ジャパン・イズ・バック!に期待」
第100回「上サイド突破を期待しながらポジションを追加」
第99回「ドル円、結局1カ月前と同様の結果に」
第98回「ドル円、パウエル発言伝わると急落」
第97回「投機筋の円買いポジション、縮小が続く」
第96回「上サイド突破を期待しながらポジションを維持」
第95回「イベント満載の1週間 ドル円は上値重い展開」
第94回「夏休み前、傾いたポジションは整理される傾向に」
第93回「参院選後も円安の流れは変わらずか!?」
第91回「ポジションを切るかどうかの瀬戸際」
第90回「ドル円、来週以降は買い増しを検討」
第89回「投機筋の円ロングポジション、縮小が続く」
第88回「投機筋の円ロングポジション、縮小」
第87回「ドル円、140円割れを目指す展開か!?」
第86回「米国『トリプルA』格付け失う 来週は為替協議の思惑も」
第85回「投機筋の円買いポジション、やや拡大 過去最大を更新」
第84回「投資家心理は改善 恐怖指数=VIXは順調に低下」
第83回「注目は24日予定の日米財務相会談 為替について協議」
第82回「ドル円『1日の値幅は3円超』 売っても買ってもやられる相場」
第81回「虎の子だったはずのポジションが見事に粉砕」
第80回「円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力」
第79回「投機筋の円買いポジション、いよいよ巻き戻しスタートか!?」
第78回「来るか!?行き過ぎた『ポジションの偏り』の反動」
第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
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第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
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第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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