株に投資してみたいが、どの株を買ってよいのかわからないという人は多いと思います。【いまから銘柄選び】では、投資を始めようと考える人たちに向けて、様々なアプローチの銘柄選びの方法をご紹介します。
第7回は高配当株の注意点についてみていきます。配当利回りの高い株式を長期保有することは、鉄板の投資手法といえますが、思わぬ落とし穴もあります。今回は配当の基本的な内容を確認し、その後に具体的な注意点をみていきます。
配当金と権利確定日
配当金とは、企業が利益の一部を株主に分配するものです。配当金をもらうためには、権利確定日に株主(株式を保有している状態)でなければなりません。
国内の企業の配当は、年2回(中間配当と期末配当)や年1回(期末配当のみ)が一般的です。少数ですが年4回(四半期ごと)配当を行う企業などもあります。なお、複数回配当が行われる場合は、それぞれの権利確定日に株主である必要があります。
配当性向
配当性向とは、当期純利益のうち、どれだけを配当金の支払いに向けたかを示すものです。当期純利益10億円で配当性向30%だとすれば、3億円を配当の支払いに向けます。この企業の発行済み株式総数が1000万株だったとすれば、3億円÷1000万株=1株当たり配当金30円と計算できます。
配当に関しては、利益の増減にかかわらず定額配当(継続して1株当たり5円の配当を行うなど)を行う企業もありますが、「配当性向30%をめどに利益還元を行う」というような方針を定め、利益の増減により配当金を増減させる企業もあります。なお、配当性向を定める企業が年々増えてきています。
高配当株のスクリーニング結果
以下はトレーダーズ・ウェブの銘柄スクリーニングにおいて配当利回り7%以上でスクリーニングを行った結果を、配当利回りの高い順に並べたものです。このランキングに登場した企業をみながら高配当株の注意点をみていきます。
高配当株の注意点①~株主還元方針と業績予想~
毎期定額の配当を行うのか、それとも配当性向を定め、利益に応じた配当を行うのか、株主還元方針を確認する必要があります。
1位の日本郵船(9101)は、「連結配当性向25%を目安とし、業績の見通しなどを総合的に勘案し利益配分を決定する」としています。なお、前期の配当性向は24%、今期(予想)の配当性向は25%となっています。配当などの株主還元方針については、企業サイトの投資家情報などに掲載されていますので、投資する前に確認するようにしましょう。
配当性向によって配当が行われる場合は、業績予想が重要となります。会社の業績予想をみるのはもちろんですが、アナリストの予想の平均値である市場コンセンサスも併せて確認したいところです。
アナリストが会社予想を保守的とみているのか、強気すぎるとみているのか、適正とみているのか、これにより増配、減配の見通しを立てることができます。なお、市場コンセンサスは有料の投資情報サイトなどで確認することになります。
日本郵船では、今期(23.3期)の純利益は1兆0300億円を予想してます。この会社予想に対して、市場コンセンサスは9961億円です。大きな差というわけではないですが、市場コンセンサスよりも会社予想のほうが高いことには、注意が必要です。
高配当株の注意点②~記念配当~
5位の三井松島ホールディングス(1518)の配当方針は、「配当性向目標(30%)を目安とするが、最終的には総合的な観点から取締役会において決定する」となっています。三井松島HDで注意しなければならないのは、今期は年間190円の記念配当(創業 110 周年・最高益記念配当)が行われるという点です。普通配当(年間80円)のみだと配当利回りは2.4%程度です。なお、前期(22.3期)の配当実績は普通配当80円のみでした。
記念配当を知らずに、今期の配当利回りの高さから三井松島ホールディングスに投資してしまうと、「配当金がいきなり減って配当利回りが下がってしまった」という事態が今後発生するかもしれません。投資を行う前に企業のIRページに掲載されている配当に関する開示などをみるなどし、記念配当の有無を確認する必要があります。
まとめ
今回は高配当の基本的な注意点をみてみました。目先の配当利回りの高さだけをみるのは危険ですね。投資期間の長短にかかわらず、投資を行う前にしっかりとその企業について調べる必要があります。そこで手を抜いてしまうと思わぬ落とし穴にはまってしまうかもしれませんので、注意が必要です。