あの時あの動き、過去から学ぶ

第13回【あの時あの動き、過去から学ぶ】8月は円高トラウマ

金融市場では、8月は市場参加者がバカンス気分で油断しているせいなのか、金融危機に襲われがちな季節としてトラウマになっています。

ドル円は、リスク回避の局面では円高に推移する傾向がありますので、8月のリスク回避は円高というトラウマに繋がっています。


2022年の8月のドル円相場は、8月2日にペロシ米下院議長が台湾を訪問したことで、中国と台湾を巡る地政学リスク回避の円買いとなりました。

ドル円は、7月14日の高値139.39円から8月2日の安値130.41円まで8.98円下落しました。

 

これまでの、「8月の円高」というトラウマを確認しておきたいと思います。

 

1990年8月2日、イラクのフセイン政権は、クウェートに侵攻しました。その後、1991年1月17日、多国籍軍によるイラク空爆により湾岸戦争が勃発しました。

ドル円は、8月2日の高値151.60円から10月の123.70円まで下落しています。

 

1997年7月、アジアの新興国諸国で一斉に通貨が暴落し、8月にかけてアジア全体が不況に陥りました。ドル円は、5月の高値127.48円から6月には110.61円まで下落しています。

1998年8月17日、ロシア政府は、対外債務の90日間の支払い停止を宣言しました。

ドル円は、8月11日の高値147.64円から9月11日の128円台まで約20円下落しました。

 

2007年8月9日、仏銀行最大手のBNPパリバ銀行傘下のミューチュアルファンドが、サブプライムローンの証券化商品の混乱により解約を凍結されました。

ドル円は、8月9日の119円台から8月17日の111円台まで下落しました。

 

2011年8月5日、米格付け機関スタンダード&プアーズが、アメリカの長期発行体格付けを『AAA』から『AA+』に格下げしました。当時、米国議会は、米国債務上限の引き上げを巡る問題で紛糾しており、デフォルト(債務不履行)のリスクが警戒されていました。

ドル円は、80円前後から10月31日の変動相場制移行後の最安値75.32円まで下落しました。

 

2015年8月11日、中国人民銀行は、中国人民元の対ドル基準値を前日比1.9%切り下げ、その後12日、13日と3日間で約4.7%の中国人民元切り下げを断行しました。

ドル円は、125円台から月末の116円に向けて約9円下落しました。

 

2019年8月1日、トランプ大統領が対中制裁関税第4弾を9月1日から発動する、と表明し、中国商務省は、国営企業に対して米国産農産物の輸入停止を要請し、報復関税措置の発動を表明したことで、米中貿易戦争が再燃しました。さらに、中国人民銀行が、ドル・人民元が1ドル=7元以上に上昇することを黙認したことで、人民元安誘導という「為替操作」の思惑が強まり、米財務省は中国を「為替操作国」に認定し、米中通貨安戦争が勃発しました。ドル円は109.32円から104.46円まで下落しました。

 

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第51回 米為替報告書、日本を「監視リスト」から放免
第50回 「AIバブル」と「ドットコム・バブル」
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第32回 1兆ドルのプラチナコイン発行?
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ターミナルレートの後のリセッション
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為替情報部 アナリスト

山下 政比呂

証券会社で株式・債券の営業、米系銀行で為替ディーラー業務(スポット、スワップ、オプション)に従事。プライベートバンクでは、為替のアドバイサーとして円資産からドル建て資産への分散投資を推奨してきたドル高・円安論者。 「酒田罫線法」「エリオット波動分析」「ギャン理論」などのテクニカル分析をベースに、ファンダメンタルズ分析との整合性を図り、相場観を構築。 ウォール街の格言「ゴルフと相場は、どちらもタイミングが全て」に出合い、ゴルフと相場の共通項を模索中。 2016年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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