日本では、1995年の阪神・淡路大震災の時の連立政権(自社さ)や2011年の東日本大震災の時の民主党政権は、震災への対応の不手際から政権の座を失っています。
しかし、エルドアン・トルコ大統領は、2月の震災への対応が問題視されましたが、再選を果たしました。
1.第1回トルコ大統領選挙(2023年5月14日)
トルコ共和国の建国100周年にあたる今年の5月14日に、大統領(任期5年)と大国民議会(一院制600議席)の同時選挙が実施されました。20年間トルコを率いてきたエルドアン・トルコ大統領の信任投票となりましたが、得票率49.52%で辛勝したものの、過半数を獲得することができずに不信任となりました。過去2回の大統領選挙では、2014年が51.79%、2018年が52.59%と、+1.8%から+2.6%程度での辛勝を続けてきましたが、今回は0.5%(約27万票)足らずに過半数を獲得できませんでした。しかし、「49.5%の得票でわが国民は再び私たちに偉大な支持を表明した。得票率をさらに高めて決選投票で勝利し、私たちは歴史的な成功を成し遂げるだろう」と勝利宣言をしました。
【大統領選挙】
・エルドアン・トルコ大統領:得票率49.52%(27,133,837人)
・クルチダルオール候補:得票率44.88%(24,594,932人)
・オアン候補:得票率5.17%(2,831,208人)
【国民議会選挙(600議席)】
・与党:49.49%(323議席)
・野党:35.02%(212議席)
2. 第2回トルコ大統領選挙(2023年5月28日)
5月28日に行われた決選投票では、エルドアン・トルコ大統領が52.1%を獲得して、6つの野党(6党円卓会議)の統一候補であるクルチダルオール氏(47.9%)を退けて、再選を果たしました。エルドアン・トルコ大統領の過去2回の大統領選挙では、2014年が51.79%、2018年が52.59%、そして今回が52.1%という1.8%~2.6%程度での辛勝が続いています。
第1回大統領選挙で3位になったオアン氏が「キングメーカー」として、エルドアン大統領を支持したことが勝因となり、おそらく副大統領などの要職に就くことが予想されています。
1967年生まれのオアン氏の経歴は以下の通りであり、親ロシア路線が窺えます。
・1989年:トルコのマルマラ大学を卒業
・1990-99年:トルコ国際協力開発庁の職員として旧ソ連のアゼルバイジャンで勤務
・2000年:保守系シンクタンク「ユーラシア戦略研究センター」ロシア・ウクライナ部長
・2009年:モスクワ国際関係大学博士号
・2010年:右派政党「国民運動党」に入党
・2011年:「国民運動党」のアナトリア州ウードゥル支部長
3. 政権与党・公正発展党(AKP)の金融政策
「金利の敵」を自任するエルドアン大統領が標榜する金利理論「エルドアノミクス」では、低金利を継続することでインフレ抑制を目論むことになっています。
しかし、政権与党内では、金融政策を緩やかな利上げ路線に転換する選択肢や、公的機関・政府補助金を通じて的を絞った融資を実行する選択肢が協議されているとのことです。
すなわち、現在の金融緩和路線が持続不可能なため、金利を段階的に引き上げて、複数の金利を使う構造を終わらせようとしているみたいです。
一方で、25日に政策金利8.50%の据え置きを決定したトルコ中央銀行(TCMB)は、2月の大地震からの復興のために、金融緩和路線を継続する、と表明しています。
4.トルコリラの続落見通し
エルドアン氏は2003年に首相、2013年に大統領に就任してトルコを率いてきたが、その20年の間、トルコリラは長期下落トレンドを形成してきまし。ドル/トルコリラは、2002年1月の1.26リラ台から、2020年1月には6リラ台、そして直近は20リラ台まで、トルコリラ円は2002年の103円台から直近の6円台まで下落しています。インフレ率は、2020年1月の前年比+14.97%から2022年10月には前年比+85.51%まで上昇していました。
トルコリラは、エルドアン・トルコ大統領の再選を受けて、下落傾向が続くのかもしれません。