「インフレ指標は、現在の5%から今年末までに3%台半ばに低下し、来年は2%に一段と近づく見通し」(カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁:2023年4月11日)
カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁は、2021年まではハト派の急先鋒として「インフレ高進は一時的」と唱え続けていましたが、2022年からは、タカ派に転向して、インフレ抑制のために利上げを継続すべき、と主張し続けています。
カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁は、2023年4月11日にモンタナ州立大学で行った講演で、「われわれの金融政策措置や、銀行ストレスによる信用状況の引き締まりが景気低迷につながる可能性はある。景気後退につながることもあり得る」と述べました。そして「インフレ率を低下させる必要がある。それができなければ、就職の見通しは実に厳しくなる」と警鐘を鳴らしました。
3月21-22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのドット・プロット(金利予測分布図)では、2023年末の見通しの最高水準の5.75-6.00%に投票した一人のタカ派は、ブラード米セントルイス連銀総裁だと本人が述べています。
その下の5.50-75%の3名のタカ派の一人が、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁だと推定されます。
ドット・プロットの見立ては、5月3日のFOMCで第10次追加利上げ(+0.25%)を行い、FF金利誘導目標を5.00-25%まで引き上げて、年末まで維持することになっています。そして、2024年末は4.00-25%まで約1%低下する見通しとなっています。
2017年3月14-15日のFOMCでは、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁を除く賛成多数で、FF金利の0.75%-1.00%への引き上げが決定されました。
カシュカリ連銀総裁は、利上げに反対した理由を文書で公表しています。
「当局が2大責務の達成にどの程度近いかを判断する上で私が重視するデータが、前回の会合以降ほとんど変わっていない。インフレ目標はまだ達成できていない。労働市場が力強さを増し続けているのは、スラック(たるみ)が残っていることを示唆している」
2022年6月のFOMCでのドット・プロットでは、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁は、2022年末までに3.9%、2023年末までに4.4%への上昇を見込むとして、最もタカ派的な見通しを示しました。そして、8月には、「インフレ率が目標を大幅に上回っている可能性が非常に高い来年初めに利下げを始めるという考えは非現実的だと思う。ある時点まで金利を引き上げた後、利下げを検討する前に、インフレ率が2%に戻りつつあると確信するまで様子を見るというシナリオの方が可能性が高いとみている」と述べ、タカ派陣営での足場を構築しました。
クリントン米政権は、ゴールドマン・サックス最高経営責任者のルービン氏を第70代米財務長官に任命しました。ブッシュ米政権は、ゴールドマン・サックス最高経営責任者のポールソン氏を第74代米財務長官に任命しました。
ポールソン氏は、ゴールドマン・サックスに勤務していたインド系アメリカ人のカシュカリ氏を財務次官補に抜擢しました。
カシュカリ氏は、1964年にインドから米国へ移住してきた両親の下で、1973年にオハイオ州で誕生したインド系アメリカ人です。
2008年9月のリーマンショックを受けて、ポールソン第74代米財務長官は、金融市場と融資の安定化を図るために7000億ドルの不良資産購入計画(TARP)というバズーカ砲を創設し、不良資産買い取り業務の責任者にカシュカリ財務次官補を選任しました。
7000億ドルという金額は、当時の住宅担保証券市場の規模が約1.4兆ドルだったので、半分を買い取ることを表明すれば、金融危機は終息するのではないかとの意図だったとのことです。