1998年8月17日、ロシア政府は「ルーブル建て」国内債務の不履行(デフォルト)を宣言し、対外債務を90日間支払い停止としました。そして、ルーブルの対米ドル相場の許容変動レンジを拡大し、事実上のルーブル切り下げを行いました。
ロシアの主要な輸出品であった原油価格が1バレル=13ドル台まで下落したことも、財政赤字の拡大につながりました。
2022年6月26日、ロシアは「外貨建て」国債の利払い猶予期間が終わったことで、ロシア革命直後の1918年以来、約1世紀ぶりにデフォルト(債務不履行)に陥ったと認定されています。
1998年のドル円相場は、1月の始値130.55円から8月11日の高値147.64円まで上昇していましたが、翌年1999年には101.25円まで下落しました。
1998年のドル円相場は、1997年のアジア通貨危機や日本の金融機関の破綻などを嫌気した円売りが優勢となっていました。
当時は、ドリームチームと呼ばれた米系のヘッジファンド「ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)」が巨大なレバレッジ(借入)をかけて驚異的な収益を上げており、為替市場でも「円・キャリートレード」が隆盛でした。
円・キャリートレードとは、低金利の円を調達し、高金利の外貨に投資する投資手法であり、高いレバレッジをかけることで、高い収益が上げられました。
円安が進行する過程で、榊原財務官が率いる財務省は、1998年4月10日の131円台で、過去最大のドル売り・円買い介入を断行し、6月17日には、140円台で日米協調介入を断行しました。
しかしながら、日米通貨当局による円買い介入は、投機筋の円売りを抑えることが出来ず、ドル円は8月11日に147.64円まで駆け上がっていきました。
そして、8月17日、ロシアがルーブル建て債務のデフォルトを宣言し、ルーブル切り下げを断行しました。
LTCMは、ロシア国債がデフォルト(債務不履行)を起こす確率は、100万年に3回(シックス・シグマ)との試算に基づき、ロシア国債に高レバレッジで投資していました。
LTCMは、米国投資銀行ソロモン・ブラザーズの花形ディーラーだったジョン・メリウェザー氏が創立し、マリンズFRB元副議長、ノーベル経済学賞のマイロン・ショールズとロバート・マートンが加わり、ドリームチームと呼ばれていました。
高度な金融工学理論を駆使して、約47億ドルの投資された資金を25倍のレバレッジをかけて、1290億ドルもの資金を運用し、さらに1.25兆ドルの取引を締結していました。
LTCMは、ロシアのデフォルトとルーブル切り下げによって、巨額の投資ポジションの手仕舞いを余儀なくされ、46億ドルの損失により破綻しました。
世界の金融機関やヘッジファンド勢は、年率40%の高収益を上げていたLTCMと同様の投資を行い、高いレバレッジで円売りポジションを構築しており、手仕舞いを余儀なくされ、金融危機が拡大しました。
ドル円は、円売り持ちポジションの手仕舞いで、98年高値147.64円から99年安値101.25円まで46.39円(▲31%)下落しましたが、10月5月の高値136.10円から8日の安値111.45円まで、わずか4日間で24.65円急落しました。