ヨーロッパ最強の通貨だった「ドイツ・マルク」を管轄していたドイツ連邦銀行のデーリング・ルームの壁には、マルクのチャートが貼られており、「勝つ介入」が至上命題でした。
市場関係者は、ドイツ連邦銀行(通称:ブバ(BUBA)」がマルクでの為替介入に踏み切ると、恐れおののいて退散していました。
本邦通貨当局は、1998年に当時における過去最大規模のドル売り・円買い介入を断行して、ドル円は、8月の高値147円台から翌年の安値101.25円まで下落しました。
2022年には過去最大規模を更新するドル売り・円買い介入を断行して、ドル円は、10月の高値151.95円から翌年1月の安値127.23円まで下落しました。
そして、1998年と2022年の高値反落は、ドル円の高値8年サイクル(1974・1982・1990・1998・2007・2015・2022)に対応しています。
■2022年のドル売り・円買い介入(9兆1880億円)
本邦通貨当局のドル売り・円買い介入の水準を検証すると、ボリンジャー・バンドのミッドバンドに一目・基準線(過去26日間の中心値)とほぼ同様の「26日」移動平均線を使用し、標準偏差「+2σ」に接近したボラティリティー上昇局面で円買い介入を断行していることが観察されます。
本邦通貨当局のドル売り・円買い介入を主導している神田財務官は、「あまりにおかしいボラティリティーに対し、正常化することが求められる。G20ではボラティリティーが高まったとの認識を初めて共有した」と述べ、ボラティリティーの抑制を円買い介入の錦の御旗として掲げています。
米国財務省報道官は「日銀は外為市場に介入した。このところ高まっている円のボラティリティーを下げることを目的とした行動だった理解している」と述べ、ボラティリティー抑制のための円買い介入を容認していました。
9月22日の第1弾の円買い介入(2兆8382億円)では、ドル円は高値145.90円から安値140.36円まで、5.54円(3.8%)下落しました。当時の日足一目均衡表・基準線は140.28円だったので、高値との乖離率は3.8%となります。
10月21日の第2弾の円買い介入(5兆6202億円)では、ドル円は高値151.95円から安値146.23円まで、5.72円(3.8%)下落しました。当時の日足一目均衡表・基準線は146.16円だったので、高値との乖離率は3.8%となります。
10月24日の第3弾の円買い介入(7296億円)では、ドル円は高値149.71円から安値145.56円まで、4.15円(2.8%)下落しました。当時の日足一目均衡表・基準線は146.16円だったので、高値との乖離率は2.4%となります。
■1998年のドル売り・円買い介入(3兆470億円)
1997年のアジア通貨危機や日本の金融危機に続く1998年1月、ドル円は130.55円で始まったが、日本版金融ビックバンで金融取引に関する規制緩和を積極化することで、日本からの資本流出が一段と加速するとの思惑から、ドル高・円安への見通しが強まりました。
4月10日、榊原財務官は、円安を抑制するため過去最大規模のドル売り・円買い介入(2兆6201億円)を断行しました。ドル円は131.20円で始まり、131.45円の高値を付けた後、円買い介入により127.40円まで下落し、128.75円で引けました。
6月17日、ドル円が144円台まで上昇したドル高・円安の勢いが収まらないことで、日米協調円買い・ドル売り介入(米国:8億ドル+日本2312億円=約25億ドル)が行われました。「強いドルが米国の国益」というマントラを唱道していたルービン米財務長官と80円台の超円高を是正した「ミスター円」榊原財務官は、80-90円台で買ったドルを130-140円台で利食ったことになります。
ドル円は、8月11日の高値147.64円まで続伸した後、ロシアのデフォルト(債務不履行)、ロングタームキャピタルマネジメント(LTCM)の破綻により、10月に111.45円まで暴落し、年末は113.40円で引けた。1999年1月には108.20円まで続落したことで、6月にはドル買い・円売り介入が実施されました。