帝政ロシアを倒したレーニンは、「資本主義を破綻させる最上の方法は、通貨を堕落させることだ」と述べました。そして、この警句は、経済学者ケインズが紹介したことで有名になりました。
そして、通貨を堕落させることは、国家の借金を棒引きにする方法にもなります。
1946年、日本政府は「旧円」から「新円」に切り替えて、対GDP比260%の国家債務を帳消しにしました。
202X年、日本政府は、「新デジタル円」への切り替えで、対GDP比220%の国家債務を帳消しにするというシナリオは杞憂なのでしょうか。
日銀の自己資本は、引当金が約7.7兆円、準備金が約3.4兆円なので、約11.1兆円となっています。
内田日銀副総裁は、3月29日の衆院財務金融委員会での答弁で、長期金利が0.5%だった2月末の利回り曲線が全体的に1.5%上昇して2%になった場合、日銀が保有する国債(約582兆円)の含み損が約50兆円になる、と述べました。
また、植田日銀総裁が金融政策の正常化に踏み出し、政策金利を▲0.1%から引き上げた場合、当座預金(約524兆円)に対する利払いが増加することになります。すなわち、1%の利上げで年間約5兆円の利払いとなり、2年超で自己資本を食い潰して債務超過に転落することになります。
日経平均株価は、1989年12月に史上最高値38957.44円まで上昇した後、1990年代のバブル崩壊、2000年のITバブル崩壊、アジア金融危機、リーマンショックなどにより、2008年10月には6994.90円まで下落しました。
その1年前の1988年12月、日本銀行の株(出資証券)は、1984年8月の上場来安値18000円から上場来高値75万5000円まで約41倍に上昇していました。
その後、日経平均株価は2021年には3万円台を回復したものの、日銀株は、2023年4月の時点で2万円台で低迷しています。
日銀株が上場来安値18000円に迫りつつある状況は、植田日銀総裁の船出が難航する可能性を示唆しているのかもしれません。
1946年(昭和21年)、幣原内閣は、戦後のインフレーション対策として金融緊急措置令により、「新紙幣(新円)」発行して、従来の旧円の紙幣流通を停止して、通貨切替政策を発動しました。
当時の日本は、第二次世界大戦の戦費調達などで財政が悪化し、国の債務残高が国内総生産(GDP)の260%を超える水準に達しており、戦後の物資不足などの影響からハイパーインフレに襲われていました。
2023年春の時点での日本の債務残高は約1250兆円となっており、名目GDP(556兆円)の225%程度になっています。
政府は、「新円切替」により、国民が所有していた現金をすべて没収して、インフレを鎮静化し、財産税により国民が保有している財産に対して高い税率を課して、徴収した税金を使って国債を返済した。すなわち、国民の資産と国家の負債(国債)を相殺しました。
日銀は、CBDC(Central Bank Digital Currency:中央銀行のデジタル通貨)の導入を目論んでいるとのことですが、1000円札(野口英世)は、1000デジタル通貨円で交換可能なのでしょうか。国民のヘッジ策としては、円紙幣の所有を避けて、不動産、株式、外貨に換えておくことになります。