「円安、過度な動きがあれば『適切』に対応」(神田財務官:6月28日)
日本銀行の大規模金融緩和の継続を受けて、円は全面安の展開となりつつあり、ドル円は145円台まで上昇し、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入への警戒感が高まりつつあります。
2022年秋の過去最大規模のドル売り・円買い介入(9兆1880億円)により、ドル円は、10月の高値151.95円から今年1月の安値127.23円まで、半値押し水準まで下落しました。
本邦通貨当局のドル売り・円買い介入を主導している神田財務官は、ボラティリティーの抑制を介入の大義名分としており、ボリンジャー・バンド+2σ付近での介入断行が確認されています。
また円買い介入時のIMM通貨先物投機部門の円売り持ち高が11~14万枚だったことで、円売り持ちポジションが膨らんだタイミングが確認できます。さらに、介入が断行された時間帯は、東京勢の参入直後や退出後、欧州勢の退出後などとなっていました。
すなわち、孫子の兵法『軍形篇』「勝兵は先ず勝ちて、しかる後に戦いを求め」にあるように、介入で勝利する態勢(時間帯と投機筋のポジション)を整えてから介入を断行しています。
ドル売り介入の原資である外為特会の外貨は1兆1264億ドルあり、持ち値は100円程度とのことで、いわゆる埋蔵金は、145円で換算した場合50兆円となっています。
本邦通貨当局は、ドル円が100円を割り込んでいた頃、本邦輸出企業のドル売り水準を防戦するため、ドル買い介入を行ってきました。
ドル円が下落基調にある時は、為券を発行して低金利の円を調達し、外国為替市場でドルを購入し、高金利の米国債で運用していますので、世界最大規模の「円・キャリートレード」を行ってきたわけです。
現状は、ドル円が上昇基調にありますので、本邦輸出企業から買い取ったドルを売却することで、本邦輸入企業のドル買い水準を抑える構図となります。
神田財務官は、「あまりにおかしいボラティリティーに対し、正常化することが求められる」と述べ、ボラティリティーの抑制を円買い介入の錦の御旗として掲げています。米国財務省報道官は「日銀は外為市場に介入した。このところ高まっている円のボラティリティーを下げることを目的とした行動だった理解している」と述べ、ボラティリティー抑制のための円買い介入を容認していました。
さらに、直近の米財務省の「為替報告書」では、日本は、監視国リスト(※ドル買い・当該国通貨売りの介入を監視)から除外されましたので、ドル売り・円買い介入は、自由に実施できる環境が整いました。
本邦通貨当局のドル売り・円買い介入の水準を検証すると、ボリンジャー・バンドのミッドバンドに一目・基準線(過去26日間の中心値)とほぼ同様の「26日」移動平均線を使用し、標準偏差「+2σ」に接近したボラティリティー上昇局面で円買い介入を断行していることが確認できます。
6月27日終了週のIMMの円売り持ち高は150888枚、「+2σ」は145.50円付近に位置しています。
■2022年9月22日(木)の第1弾の円買い介入(2兆8382億円)
・介入時間帯:日本時間17時半頃(アジア・東京勢が退場し、欧州勢が参入し始めた頃)
・IMM円売り持ち高:116047枚(※9/20)
・ドル円:高値145.90円から安値140.36円まで、5.54円(3.8%)下落しました。一目均衡表・基準線は140.28円だったので、高値との乖離率は3.8%となります。
・ボリンジャー・バンド+2σ:146.12円
■2022年10月21日(金)の第2弾の円買い介入(5兆6202億円)
・介入時間帯:日本時間23時半頃(欧州勢が退場し、NY勢が参入し始めた頃)
・IMM円売り持ち高:124919枚(※10/18)
・ドル円:高値151.95円から安値146.23円まで、5.72円(3.8%)下落しました。一目均衡表・基準線は146.16円だったので、高値との乖離率は3.8%となります。
・ボリンジャー・バンド+2σ:150.39円
■2022年10月24日(月)の第3弾の円買い介入(7296億円)
・介入時間帯:日本時間8時半頃(東京勢が参入し始めた頃)
・IMM円売り持ち高:140197枚(※10/25)
・ドル円:高値149.71円から安値145.56円まで、4.15円(2.8%)下落しました。一目均衡表・基準線は146.16円だったので、高値との乖離率は2.4%となります。
・ボリンジャー・バンド+2σ:150.69円