日々是売買~トレードへの道

第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」

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ドル円、石破首相の火消しで持ち直す

 

先週末は金融市場に激震を与えた「石破ショック」がありましたが、週明け9月30日も日本株とドル円はその流れを受けて急落しました。自民党総裁選で石破茂元幹事長が勝利したことで、市場では「石破氏の勝利が日銀による追加利上げの道を開いた」との声が聞かれたほか、「自民党総裁選で日銀の利上げに批判的な高市早苗氏が勝利するとの思惑から膨らんでいた円売りポジションを解消する動きが広がった」との指摘がありましたが、それが続いた格好です。この日の日経平均は終値で1910円安。ドル円は141.65円まで売り込まれる場面がありました。

 

*Trading Viewより

 

ただ、石破茂首相は2日、植田和男日銀総裁との会談後、「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」「これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」と発言。火消しを図りました。就任前は金融政策の正常化による「金利のある世界」を肯定していた首相の発信の変化に市場は敏感に反応し、株高と円安が急速に進んでいます。

 

さらに、昨日末4日の9月米雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比25.4万人増と予想の14.0万人増を上回り、失業率が4.1%と予想の4.2%よりも強い結果となったことが分かると、市場では米連邦準備理事会(FRB)の利下げペースが想定より遅くなるとの見方が強まり、米長期金利の急上昇とともに円売り・ドル買いが加速。一時149.00円と約1カ月半ぶりの高値を付けています

 

 

 

11月FOMCでの0.50%利下げ確率がゼロに

 

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、11月6-7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%の利下げを予想する確率は前日3日の32.1%から0%になりました。なお、0.25%の利下げ確率は97.0%、据え置きは3.0%となり、据え置き予想も出始めました。

 

*CME FedWatch Toolより  

 

 


投機筋、円買いポジションの拡大が一服

 

ヘッジファンドによる円売りポジションは7月、過去17年間で最大規模に膨らみました。米商品先物取引委員会(CFTC)が先週日発表した7月2日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の売り越し=ドル円のロングは18万4223枚と2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録。円先物が導入された1986年以来でも屈指の規模となりました。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

ただ、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが続き、9月24日時点の投機筋のポジションは6万6011枚の円買い越しと、2016年10月以来の円買い越し=ドル円のショートとなりました。しかしながら、この動きも一服。昨日10月4日(日本時間5日早朝)に発表された10月1日時点の建玉報告によると、投機筋の円の対米ドルポジションは5万6772枚の円買い越しと前の週から9239枚減少したことが明らかに。投機筋による円買いポジションの拡大にひとまず歯止めがかかっています。

 

 

 

設定したストップロス水準を割り込まず

 

私は「高市氏勝利」と「年末ラリー」を期待して、9月26日にドル円を「144.655円」でロングしていました。「石破ショック」でロスカットを覚悟していましたが、設定した水準を割り込むことはなく、するすると上げてしまいました(嬉しい悲鳴)。正直、週明け早々にロスカットになると思っていました。

 

ドル円の日足チャートを見ると、1年2カ月ぶりの安値139.58円という、かなり分かりやすい下値目処が出来ています。よって、ここより若干下の「139.50円」にストップロス注文を設定しています。


*IG証券より

 

なお、市場では「トレーダーらは円安を予想して投機的なポジションを再び積み増している。これは石破首相の発言に勇気付けられたためだ。ヘッジファンドが好むキャリートレードで、利回りの高い資産を買うために円を売る魅力が高まっており、ドル円は150-155円の水準まで上昇する可能性があると見ている」との声が聞かれました。

 


 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
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第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
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第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
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第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
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第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
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第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
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第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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