中国国家統計局は2022年12月の中国都市部の失業率が5.5%だったと発表しました。3年近くにわたって続いた「ゼロコロナ」政策が12月に突如終了したことを受け、失業率は前月比で0.2ポイント低下しましたが、高校・大学卒業後間もない16-24才の若年層に限ると失業率は16.7%と依然として高い水準にあり、深刻な社会問題となっています。
22年の新規大卒者数は1000万人突破、受け入れ枠が不足
若年層の失業率は22年7月に19.9%を記録。約5人に1人が失業した計算になり、統計のある18年1月以降で最も高い水準となりました。一般的に日本では3月が卒業シーズンになりますが、中国では7月が卒業シーズンに当たるため、労働市場への新規流入が増えることにより、例年7月は他の月に比べて失業率が高くなる傾向があります。ただ、22年はこれまでと異なり、4月の段階で18.2%と前月比で2.2ポイント上昇し、大きく悪化しています。
国家統計局の担当者は若年層の高い失業率について、22年は新規の大卒者数が初めて1000万人を突破し過去最高を記録したこともあり、労働市場への流入が早まったことで失業率も前倒しで悪化したと指摘。新型コロナウイルスで大打撃を受けた企業も多く、求人数が縮小したことも原因だったとの見方を示しています。また、求職者と企業のニーズが一致しない「雇用のミスマッチ」も広がっているとみています。
「タンピン族」出現、日本の「さとり世代」?
中国では日本以上に学歴を重視する傾向があり、厳しい受験競争が繰り広げられています。ただ、数々の難関を突破して大学を卒業したとしても、希望する職に就くのは至難の業。近年は貧富の差の縮小に向けて富を再分配する「共同富裕」の理念の下、中国政府がアリババ集団(09988)やテンセント(00700)、美団(03690)などをはじめとするIT企業への締め付けを強化したことに加え、コロナ禍が追い討ちをかけたことで求人数が減少しており、若年層の間では諦めムードも漂いつつあるようです。
中国では最近、「タンピン族」「タンピン主義」などという言葉が広く知られるようになりました。中国語で「タンピン」とはもともと「横になる」とか「寝そべる」などの意味があり、無理して働いて高望みするよりも、最低限の生活で満足するというような意味合いで使われています。日本では少し前に「さとり世代」などという言葉が流行りましたが、これと近い意味を持つのかもしれません。
地方政府は対策強化、公務員の募集枠を大幅増
一方、若年層を中心に「タンピン族」や「タンピン主義」が増えてしまっては安定した経済活動や国家運営に支障をきたすので、中国政府も対策を強化しています。若年層の高い失業率問題を解決しようと多くの地方政府が公務員の募集枠を大幅に増やしており、なかでも甘粛省や雲南省、広西チワン族自治区、内モンゴル自治区の4つの省・自治区では23年の公務員の募集人数を前年の1.5-1.8倍に増やすなど、力を入れています。また、河南省では募集人数のうち大部分を経験不問とし、修士・博士課程修了者の応募年齢の上限を35才から40才に引き上げています。
ただ、募集人数が増えても求職者数の増加で競争率は高くなっており、競争率が300倍を超える職種も出ているようです。23年の新規大卒者数は過去最高を記録した22年(1076万人)からさらに82万人増えて1158万人に上る見通しで、追加の対策を求める声が高まっています。