中国関連のニュースを読んでいると、「一線都市」や「二線都市」などという表現を目にする機会が多々あります。もともとは不動産関連で使われていた言葉ですが、徐々に定着し、現在は幅広い分野で使われるようになっています。各都市を分類する具体的な基準は明確ではないものの、経済的な競争力や工業・商業の発展度合い、人口規模、都市の発展水準、総合的な経済力、住民の消費水準、交通の利便性などが全国的に及ぼす影響によって総体的に決められているようです。
一線都市=北上広深、五線都市まで分類
「一線都市」や「二線都市」といった表現が使われる代表的なものとしては、中国の国家統計局が毎月中旬に発表する住宅価格統計が挙げられます。主要70都市の新築分譲住宅価格と中古分譲住宅価格に関するもので、「一線都市」とは北京、上海、広州、深センの4都市を指し、頭文字を取って一般的に「北上広深」と呼ばれています。「北上広深」は世界的にも知られたいわゆるスター級の大都市で、4都市合わせた国内総生産(GDP)は中国全体の約8分の1、財政収入は約6分の1をそれぞれ占めています。
「一線都市」に次ぐ規模の「二線都市」には、北京と上海を除く残りの直轄市(天津と重慶)のほか、省の管轄下ではあるものの、経済面や財政面で省と同程度の自主権が認められている副省級市など計31都市で構成され、この他に「三線都市」が35都市あります。国家統計局の住宅統計は主要70都市に限ったものなので、「一線都市」から「三線都市」までになっていますが、全体では「五線都市」まであり、一般的に「一線都市」と「二線都市」は合わせて「高線都市」と呼ばれ、「三線都市」以下は「低線都市」と呼ばれています。
中国の不動産業界は近年、中国恒大集団や碧桂園など大手デベロッパーの債務問題などもあり、業界全体が大きく低迷しています。中国ではGDP全体に占める不動産業界の割合が比較的大きいこともあり、最近は地方政府を中心に不動産規制を緩和する動きが目立っていましたが、一線都市の住宅価格は依然として高水準で、二線以下の都市とは状況が大きくことなります。そのため、「北上広深」の各都市が規制緩和に乗り出した場合は、市場でも大きなニュースとなります。
「新一線都市」、成都や重慶など中部地区を有望視
一方、これまでの「一線都市」と合わせ、近年は中国本土メディアの『第一財経週刊』が発表する「新一線都市」も注目されつつあります。最新の2023年「都市の商業的魅力ランキング」では、商業施設の充実度、都市のハブとしての機能性、住民の活性度、生活スタイルの多様性、将来性の5つを軸に337都市をランキング。「一線都市」と「二線都市」の間に「新一線都市」を加えた計6つのカテゴリーに分類しています。
具体的にみてみると、「一線都市」は北京と上海、広州と深センとの間で順位の入れ替えはあるものの、23年は上海が魅力度指数142.57でトップ。以下、北京が138.42で2位、広州が108.03で3位、深センが105.23で4位と続きます。注目の「新一線都市」では、成都、重慶、杭州、武漢、蘇州、西安、南京、長沙、天津、鄭州、東莞、青島、昆明、寧波、合肥の15都市が選出されています。「新一線都市」は13年に初めて発表されたもので、なかでも成都と重慶は10年前の13年も「新一線都市」に選出されています。『第一財経週刊』は、北部にある都市の失速と没落が目立つ半面、中部では予想を上回る点数を叩き出した新興都市が複数あると指摘。環渤海地区、長江デルタ地区、珠江デルタ地区の3大経済圏に次ぐ第4極に成長する可能性があるとの見方を示しており、今後の行方がますます注目されます。