金相場は今年3月以降、史上最高値の更新が相次いでおり、5月20日にはスポット価格が一時、1トロイオンス=2440米ドルを超え、4月に記録した取引時間中の最高値を再び更新しました。米国の4月の消費者物価指数(CPI)と小売売上高が予想を下回ったことで、米連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げに踏み切るとの見方から、金利の付かない資産である金の先高観は依然として強い状態が続いています。
人民銀の金保有量、3月末時点で21年比16%増
金を巡っては、米国の利下げ観測や地政学的リスクなどが価格を押し上げる要因として挙げられますが、各国による中央銀行による金の買い増しも大きな一因となっており、中国人民銀行(中央銀行)も積極的に金の買い増しを進めています。
中銀証券でチーフエコノミストを務める管濤氏は、中国が金の買い増しに動いたタイミングが2000年以降で大きく分けて5回あったと指摘しています。具体的にみてみると、1回目は01年12月-02年12月で、計662万トロイオンスを取得し、保有量を1929万トロイオンスに増やしています。2回目は09年4月で、保有量は1460万トロイオンスから3389万トロイオンスに拡大。3回目は15年6月-16年10月で、16年5月は買い増しを見送ったものの、残りの15カ月はいずれも買い増しを行い、保有量は2535万トロイオンスから5924万トロイオンスに増えています。
4回目は18年12月-19年9月で、10カ月連続で買い増しを行い、保有量は340万トロイオンス増の6264万トロイオンスに拡大。貿易摩擦が激しさを増すなか、地政学的リスクなどを考慮した動きであり、「1米ドル=7元」のラインを死守したいとの考えもあり、すべて国内調達だったとしています。現在進行中の5回目については、21年11月から24年3月末まで17カ月連続で買い増しを行っており、保有量は7274万トロイオンスと、21年末に比べ16.1%増加しています。
人民銀の金購入、しばらく継続か
管氏は、23年末時点で世界の外貨準備資産に占める金準備の比率(国際金融機関の保有分は含まない)は19.4%となっており、07年末比で7.7ポイント上昇した一方、中国は23年末時点で同比率が4.6%にとどまっている点に言及(07年末比では3.5ポイント上昇)。中国が国際的な水準まで引き上げることを目標にしているかどうかは定かでありませんが、大きな開きがあるのは確か。今年は米国の大統領選挙なども予定されており、米中関係の一段の悪化などが警戒されるなか、中国が金を買う動きはまだしばらく続くとみられています。
招金鉱業、金価格が1%上昇で24年利益は2.9%増
一方、個別銘柄をみてみると、代表的な銘柄としては、香港市場では、紫金鉱業集団や招金鉱業、山東黄金鉱業などがあり、中国本土市場では、香港にも上場する紫金鉱業集団や山東黄金鉱業のほか、中金黄金や赤峰吉隆黄金鉱業、山東恒邦冶錬、盛達金属資源などが挙げられます。
香港市場では、金価格の上昇を受けて関連銘柄の株価パフォーマンスも好調で、20日には紫金鉱業集団をはじめ、中国黄金国際や霊宝黄金などが上場来高値を更新しました。モルガン・スタンレーはリポートで、山東省の金鉱会社、招金鉱業について、金に関連する業務が2023年売上高の約9割を占めており、同業他社に比べて高い水準にあると指摘。金価格の上昇で恩恵を受けやすい傾向にあり、金価格が1%上昇するごとに24年純利益が2.9%押し上げられると試算しています(紫金鉱業集団は0.6%の押し上げにとどまると予想)。招金鉱業の株価は24年に入ってから5月20日までに5割超上昇しており、今後の株価動向が注目されます。