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「先A後H」:A株企業の香港上場、美的集団で注目 新たなトレンドに

中国の家電大手、美的集団が今年9月17日に香港上場を果たし、金融情報会社、Windの統計によれば、中国本土と香港に重複上場する149社目の「A+H」企業となりました。香港市場では今年に入ってからこれまでに宅配大手の順豊控股をはじめ、医薬品の開発を手掛ける四川百利天恒薬業や内モンゴルの金鉱会社、赤峰吉隆黄金鉱業など各業界を代表する企業が相次いで香港証券取引所に上場を申請しており、「A+H」が新たなトレンドになりつつあります。


「A+H」企業とは、A株とH株をともに発行している中国登記の上場企業を指します。A株とH株は権利と額面は同一ですが、A株は中国本土の株式市場において人民元建てで取引され、H株は香港市場において香港ドル建てで取引される、という違いがあります。


美的集団のH株は公開価格が仮条件(52.00-54.80HKドル)の上限に当たる54.80HKドルに決まり、新規株式公開(IPO)で310億HKドルを調達。オーバーアロットメントオプションの行使で最終的な調達額は357億HKドルとなり、今年1-9月に実施されたIPOでは、米ナスダックに上場した米低温物流大手、リネージュ(調達額は398億HKドル)に次ぐ世界第2位の規模となりました。



かつては「先H後A」、最近は「先A後H」が主流に

「A+H」を詳しくみてみると、A株上場企業が香港上場を申請する「先A後H」方式と、香港上場企業が本土上場を申請する「先H後A」方式の2つに分けることができます。少し前まではチャイナ・テレコムチャイナ・モバイルなどの「先H後A」が「本土回帰」として話題を集めていましたが、最近は美的集団を代表とする「先A後H」方式が主流となっています。


というのも、中国政府は最近になって大規模かつ包括的な景気対策を発表しましたが、9月の消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)ではデフレ圧力が高まっていることが示されており、国内経済の先行き不透明感が依然として強いなか、海外市場に活路を見出そうとするA株企業が増えていることが原因の1つに挙げられるようです。


A株上場企業、続々と香港上場を申請

「先A後H」方式を時系列でみてみると、今年1月中旬に冷凍加工食品会社の安井食品集団が香港上場に向けて準備作業を開始すると発表。1月下旬にはワクチン開発を手掛ける北京康楽衛士生物技術が香港上場を申請したと発表。北京康楽衛士生物技術は21年9月に開設された北京証券取引所に上場する企業であり、同取引所の上場企業として初めての香港上場申請とあって、話題となりました


一方、2月上旬にはマーケティングやEコマースを手掛ける厦門吉宏科技のほか、太陽電池メーカーの海南鈞達新能源科技が香港上場を申請したと発表。4月下旬にはリン酸鉄リチウム正極材の製造を手掛ける江蘇龍蟠科技、6月下旬には順豊控股が香港上場を申請したと相次いで発表。江蘇龍蟠科技は昨年10月下旬、順豊控股は昨年8月下旬に香港上場を申請していた経緯もあり、再申請となっています。


下期に入ってからもA株企業による香港上場の意欲は衰えず、時価総額が800億元近くに上る四川百利天恒薬業のほか、赤峰吉隆黄金鉱業などが申請を済ませています。



「第2の美的」目指して多くのA株企業が香港上場に関心

市場調査会社、フロスト&サリバンでグレーターチャイナの執行役員を務める周明子氏は、「A+H」の2つの資金調達プラットフォームは企業が国内外で資金を調達する上で有用であり、特に香港上場は企業の調達効率や調達能力を高めることにもなると指摘。海外投資家の注目も集めることが可能で、企業の知名度や国際的なイメージの向上が期待できるとしています。


香港証券取引所の陳翊庭最高経営責任者(CEO)は、美的集団の香港上場が成功裏に終わったことを受け、「第2の美的」となるべく、多くのA株企業が「先A後H」方式での香港上場を検討していると説明。最近は上場制度などの改善・整備も進んでおり、香港市場はその他の市場と比べても遜色はないとして自信を示しています。


美的集団に続けるか、最有力候補は順豊控股

A株上場企業による香港上場申請が増えつつあるものの、一部では目論見書が期限切れとなるなど、手続きが思うように進んでいない企業も見受けられます。一方、順豊控股は9月中旬に香港証券取引所によるヒアリングが実施されたと発表。美的集団に続く最有力候補として市場の期待も高く、今後の進展が注目されます。


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中国株情報部 アナリスト

竹内 なつ子

大学卒業後、日本の証券会社に勤務。中国・北京での語学留学を経て、日系証券会社の上海駐在員事務所や台湾の会計士事務所で翻訳業務に従事。2級FP技能士。

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