中国株投資を始めるためのキーワード

「広州交易会」:年2回開催、貿易動向を占うバロメーターとして注目

中国では毎年春(4月)と秋(10月)に広東省広州市で広州交易会(広交会)と呼ばれる大規模な展示商談会が開催されています。広交会の正式名称は中国輸出入商品交易会といい、展示面積や商品数、バイヤー数などいずれも国内最大規模を誇ることから、中国の対外貿易の動向を占うバロメーターとして注目度も高く、開催時期になると市場でも話題に上ることが多くなります。


広交会の歴史は古く、中国の対外開放の窓口として国際貿易の重要な役割を担ってきました。1回目が開催された1957年といえば、中国では毛沢東の主導で大躍進政策が始まった頃でもあり、その後には国内経済を大混乱に陥れた文化大革命など大変な出来事が続きますが、広交会はこれまでほぼ途切れることなく、23年春で133回の開催を数えています。


23年春は3年ぶりに通常開催、成約額は251億米ドル超


新型コロナウイルスの世界的な大流行により、2020-22年の広交会はオンラインなど制限付きでの開催を余儀なくされましたが、23年春はオンラインに加え、3年ぶりにオフラインでの通常開催が復活しました。23年春の広交会は4月15日-5月5日の日程で開かれ、うち第1期(4月15-19日)では電子・家電、照明、車両・部品、機械、工具、建材、化学製品、エネルギーなど、第2期(4月23-27日)では日用消費財、ギフト、内装用品など、第3期(5月1-5日)では繊維・アパレル、靴、事務用品・レジャー用品、医薬・医療・ヘルスケア用品、食品などの製品についてそれぞれ展示・商談が行われました。


主催者側の発表によれば、23年春の広交会にはオンライン・オフライン合わせて229の国・地域から参加があり、うち213カ国・地域の12万9006人のバイヤーが広州の会場に実際に足を運んだとのこと。また、米ウォルマートや仏オーシャン、独メトロなどの100を超える多国籍企業がイベントに参加しています。期間中の成約額はオンラインが34億2000万米ドル、オフラインが216億9000万米ドルで、合計では251億1000万米ドルに上り、一時期ほどの勢いはないものの、主催者側は予想を上回る好調が示されたとし、今後の回復に期待を寄せています。



欧米バイヤー減少、「一帯一路」周辺国などの取引増に期待


民生証券が出展企業に対して行ったアンケートをまとめたリポートによれば、23年春の広交会では海外からのバイヤーが減っており、メインは東南アジアや日本、韓国、中東などからのバイヤーで、欧米からのバイヤーは大きく減ったとの回答を得たとしています。中国政府が3年超にわたって「ゼロコロナ政策」を続けた結果、クロスボーダーの電子商取引が急速に発展し、欧米のバイヤーが時間と費用をかけて広州まで来なくなったとの見方で、半面、中国政府が進める経済圏構想「一帯一路」の周辺国との取引が大きく増えている点に注目し、今後、新たな成長エンジンになるとの予想を示しています。一方、ウクライナへの軍事侵攻で欧米からの経済制裁が続くロシアについては、中国との取引に積極的なバイヤーも多く、23年に入ってロシアからの受注が30%超増加したと話す出展企業もいたようです。


中国では22年末に「ゼロコロナ政策」が撤廃された後、景気の急速な回復が期待されていましたが、発表される主要経済指標の予想下振れが相次いだことで、景気回復の鈍さに対する警戒感が強まっています。西側諸国との貿易摩擦など懸念材料も多くありますが、景気回復に向けて中国政府は広交会などの大概的なイベントにも引き続き力を入れているようです。なお、次回の広交会は10月15日-11月4日に開催が予定されています。


この連載の一覧
「打風不停市」:悪天候下での通常取引、初回は混乱なく通過
「上海証取の株券ペーパレス化」:世界に先駆けて実現
「新中国の証券取引所の誕生」(その2):“正式開業”は上海が第1号
「新中国の証券取引所の誕生」(その1):“営業開始”は深センが第1号
「市場介入の始まり」:投機熱抑制と相場救済
「先A後H」:A株企業の香港上場、美的集団で注目 新たなトレンドに
「証券口座の開設者急増」:中国で株式投資ブームが再来?
「香港小売業」:かつての「買い物天国」、中秋節・国慶節で巻き返しに期待
「無人タクシー」:商業化に熱い期待
「プライマリー上場切り替え」:アリババ集団が手続き完了、本土投資家も近く投資可能に
「蘋果概念株」:iPhone16発表控え再注目、代表銘柄に瑞声科技やBYDなど
「パンダ寄贈」:国慶節に香港へ2頭、経済効果に期待高まる
「中国股民の誕生」:冷淡から熱狂へ 1990年の株式投資ブーム
「相互取引制度」:本土投資家は香港株に、海外投資家はA株に投資が可能 制度の整備進む
「新中国の証券取引市場の誕生」:発行市場の広がりで流通市場が生まれる
「中国恒大集団」:本土不動産子会社に罰金、仲介機関や監査事務所にも波及
「新中国の株券の誕生」:株式制度の原点からのスタート
「金と中国」:人民銀は21年11月から買い増し継続、産金株は高値更新相次ぐ
「万科企業」:中国不動産市場と資本市場発展の縮図
「白名単」:融資に適した不動産プロジェクトを集めたホワイトリスト
「中国不動産市場の誕生」:1980年代に初の分譲物件
「景勝地運営」:上場企業を通してみる中国観光地、黄山や玉龍雪山など
「辰年相場」:過去4回は平均14%上昇、風水では年後半に上昇か
「映画市場」:23年興行収入は4年ぶり高水準、国産映画が圧倒的存在感
「胡潤百富榜」:英会計士が趣味で始めた長者番付、トップは農夫山泉の会長
「三条紅線」:不動産企業が超えてはならない3本のレッドライン
「シグナル8」:台風襲来で取引停止、制度見直し議論本格化
「中国人民銀行」:中国の中央銀行
「中央1号文件」:新年最初の政策文書 20年連続で「三農」がテーマ
「房住不炒」:不動産投機を封じ込む中国の不動産政策基調
「人口問題」:61年ぶり人口減、かつては第2子で高額罰金
「香港証取の2通貨建て取引」:人民元グローバル化推進の一環
「一線都市」:近年は「新一線都市」も登場
「新エネ車」:高まる中国の存在感 BYDは日本進出
「明星株」:台湾歌手の関連銘柄が香港デビュー
「国務院」、最高国家行政機関
「中央経済工作会議」、経済関連の最高会議
「広州交易会」:年2回開催、貿易動向を占うバロメーターとして注目
「n中全会」、5年間に7回開催の重要会議
「共産党大会」、事実上の中国の最高指導機関
「最低賃金」:地域ごとに決定、上海は月給が10年で6割増
「結婚事情」:婚姻件数激減、背景には中国古来の固定観念?
「失業率」:若年層は5人に1人が失業、諦めムードも
「全国政協」、全人代と合わせて「両会」
「全人代」、国家最高権力機関
「中国の祝日・イベント 」:国務院が祝日スケジュールを年末に発表、近年は「独身の日」も台頭

中国株情報部 アナリスト

竹内 なつ子

大学卒業後、日本の証券会社に勤務。中国・北京での語学留学を経て、日系証券会社の上海駐在員事務所や台湾の会計士事務所で翻訳業務に従事。2級FP技能士。

竹内 なつ子の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております