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「新エネ車」:高まる中国の存在感 BYDは日本進出

新エネルギー車(NEV)を巡り、世界で中国の存在感が高まりつつあります。世界の自動車産業は長い間、欧米や日本、韓国のメーカーが幅を利かせてきましたが、中国はすでに世界最大のNEV市場となっているほか、ガソリン車からNEVへの世界的なシフトを背景に近年は輸出も大きく伸ばしています。中国を代表するNEVメーカー、BYDは23年に入って日本の乗用車市場に正式参入しており、日本でBYDの自動車や店舗を目にする機会も今後増えるかもしれません。


調査会社トレンドフォースのデータによると、2022年のNEV販売台数は世界全体で前年比63.6%増の1065万台に上り、うち電池駆動EV(BEV)が同68.7%増の789万台、プラグインハイブリッド車(PHEV)が50.8%増の274万台となっています。地域別では、中国が世界最大のマーケットで、販売台数全体の63%を占めています。



BYDシェアはBEVで世界2位、PHEVで世界1位

NEVの世界販売をブランド別でみてみると、BEVでは、米テスラがシェア16.6%でトップとなっていますが、2位のBYDがシェア11.5%と追い上げており、差は約5ポイントまで縮まっています。23年に入ってテスラは世界各地で値下げ販売を強化していますが、BYDは新NEVブランド「仰望(Yingwang)」を発表するなど、高級車市場の開拓を強化しており、両社の戦略の違いも鮮明となっています。このほか中国系では、上海汽車集団と米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁メーカー、上汽通用五菱汽車がシェア7.6%、広州汽車集団傘下の広汽埃安新能源汽車(AION)が3.5%、奇瑞汽車が2.9%、重慶長安汽車が2.4%、上海汽車集団傘下のMGが2.1%などと健闘しています。


PHEVでは、BYDがシェア34.5%で世界トップとなっており、2位の独BMW(シェア7.3%)を大きく引き離しています。このほか中国系では、理想汽車がシェア4.9%、吉利汽車がスウェーデンのボルボ・カーズと手掛けるLynk & Co(領克)が2.6%などとなり、トップ10にランクインしています。



中国市場では22年にPHEVの販売が大きく伸びましたが、欧州市場では減少しており、各社の戦略によっては、23年のPHEVシェアが大きく変動することになりそうです。トレンドフォースは23年について、世界的なインフレや利上げ、リストラなどが消費マインドに影響を与える可能性があるものの、コロナ後の旅行需要の回復などが自動車販売を押し上げるとみており、NEVの販売台数は世界全体で36.2%増の1451万台に上ると予想しています。


輸出好調、技術力や生産力に強み

輸出に関しては、中国はNEV産業の発展が早い段階で進んだこともあり、サプライチェーンや生産力が十分に整っているほか、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)ブレードバッテリーなどの高い技術や生産能力も掌握していることから、海外進出を進める上で世界のライバル企業に比べて有利となっています。


一方、中国企業が輸出を伸ばした理由の1つとして、ガソリン車の全面的な販売禁止を進める欧州市場に狙いを定めたことが挙げられます。インフレが続くなか、コストパフォーマンスの高さで現地メーカーを抑え、販売を増やしています。また、NEVの普及率が低い東南アジア市場で早い時期から事業展開を進めたことも理由の1つ。ガソリン車では日系メーカーに差を開けられていますが、中国系メーカーの東南アジア市場における販売シェアは22年に52%と半分を超えており、23年には63%まで拡大するとみられています。



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中国株情報部 アナリスト

竹内 なつ子

大学卒業後、日本の証券会社に勤務。中国・北京での語学留学を経て、日系証券会社の上海駐在員事務所や台湾の会計士事務所で翻訳業務に従事。2級FP技能士。

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