華為技術(ファーウェイ)から分離・独立した栄耀(オナー)が昨年12月28日、株式制改革を無事に終え、社名を「栄耀終端股フン有限公司」に変更したと発表しました。今回の改革の実施・完了によって栄耀の事業運営に大きな変更が生じることはないものの、市場ではこれまでも栄耀の上場に向けた一挙手一投足が注目を集めていたこともあり、一部メディアは、改革の実施は新規株式公開(IPO)に向けた重要な一歩であり、完了によって栄耀はIPOプロセスをスタートする準備が整ったと報道。上場がさらに現実味を帯びてきました。
京東方科技集団やチャイナ・モバイルも出資
栄耀はもともと華為技術が展開するサブブランドとして2013年に設立。ローエンド・ミドルレンジ市場をターゲットとし、小米集団やvivoのライバルとして目されていましたが、ハイスペックな製品も多く、中国で高い人気を博していました。ただ、華為技術は米国の制裁を受けてスマートフォン事業で苦戦を強いられ、生き残りを目的に栄耀をチームごと切り離すことを決断。20年11月以降の栄耀は華為技術から完全に独立し、事業運営がスタートしています。
栄耀はこれまでに複数回の資金調達ラウンドを実施し、登録資本金は322億4000万元に拡大。最新のデータでは、計23社が出資し、株主には深セン市智信新信息技術や深セン市鵬程新信息技術合夥企業(有限合夥)のほか、京東方科技集団やチャイナ・モバイル、チャイナ・テレコムなどの企業が名を連ねています。
出資や提携など関連銘柄に注目の可能性も
栄耀を巡っては、23年11月に「裏口上場」を計画していると伝わり、出資や提携など関連のある銘柄が大幅高となったことがありましたが、会社側は「中国での上場を計画しているが、裏口上場は選択にない」と否定していた経緯があります。一方、今回の改革完了で栄耀の上場は実現に近づきつつあり、関連銘柄が再び注目を集める可能性もありそうです。
中国スマホ出荷台数、24年はシェア5位
調査会社カナリスのリポートによると、2024年の中国スマートフォン出荷台数は2億8500万台と前年比で4%増加し、3年ぶりにプラス成長に転じたことがわかりました。ブランド別では、vivoが4930万台とトップで、シェアは前年の11%から6ポイント拡大。2位は華為技術で4600万台(シェアは16%)、3位は米アップルで4290万台(同15%)となり、4位はOPPOで4270万台(15%)と続き、栄耀は4220万台(15%)で5位にとどまっています。カナリスは続く25年について、需要の緩やかな回復が続き、中国のスマートフォン出荷台数は2億9000万台に上ると予想しています。
一方、栄耀の中国シェアはvivoや再登場した華為技術の健闘により5四半期連続で縮小するなど苦戦を強いられていますが、活路を海外に見いだそうと事業の強化を進めているようです。栄耀の販売ネットワークは100の国・地域に及び、2021-23年の海外売上高は年平均で2倍超に拡大。海外販売台数が全体に占める割合はすでに3割を超えています。また、昨年3月には、人工知能(AI)の研究開発に100億元超を投入したことを明らかにしており、2000件超のAI関連の特許手続きを完了しており、AI時代の本格的な到来に着実に準備を進めているとみられ、今後の活躍に期待がかかります。