中国の国家電影局の発表によると、2025年春節(旧正月)連休(1月28日-2月4日)の映画興行収入は95億1000万元、観客動員数は1億8700万人に上り、春節連休としていずれも過去最高を記録したことがわかりました。今年は春節連休に合わせて計6本の新作が封切られており、旧暦元日に当たる1月29日は興行収入と観客動員数が単日の過去最高記録を更新するなど絶好調となっています。
作品別にみてみると、道教の神であるナタを題材にしたアニメーション映画「ナタ 魔童鬧海(ナタ2)」が興行収入48億3900億元でトップとなっており、2位は探偵コンビが事件を解決していくさまを描いたコメディ映画「唐人街探偵」シリーズの新作「唐探1900」(22億7800万元)、3位は中国古典小説『封神演義』が原作の三部作シリーズの第2作「封神:戦火西岐」(9億9800万元)と続いています。この他では、徐克(ツイ・ハーク)氏が監督を務めた「射鵰英雄伝:侠之大者」など注目作も多くありましたが、蓋を開けてみれば、ナタ2が圧倒的な強さをみせつける結果となりました。
ポップマートは上場来高値、北京光線伝媒はストップ高続出
ナタ2は19年に公開された「ナタ 魔童降世」の続編となり、前編も興行収入は50億元を超えるなど大ヒットしていた経緯があります。ただ、ナタ2の勢いは連休後も止まらず、興行収入は13日までに100億元を突破。前作を上回る空前の大ヒットとなっており、興行収入は最終的に160億元に達するとの声も聞かれています。
ナタ2の大ヒットを受け、株式市場では関連銘柄が大幅高となっています。「盲盒」とよばれる中身の見えない箱に入ったフィギュアや商品の販売を手掛けるポップマート(09992)は上場来高値を更新し、ナタ2の上映が始まってから2月14日までの株価上昇率は約2割に上っています。また、映画チケットのオンライン販売を手掛ける猫眼娯楽(01896)やアリババ集団(09988)傘下の映画関連事業者、アリババ・ピクチャーズ(01060)は直近1カ月弱で2割超上昇。深セン証券取引所の新興企業市場「創業板」に上場する北京光線伝媒(300251)は傘下企業が製作に関わっており、旧暦巳年に入ってからの8営業日で6回にわたってストップ高をつけ、株価は約3.6倍に急騰するなど、にわかに「ナタ2バブル」が到来しています。
監督のサクセスストーリーにも注目、脛かじりからヒットメーカーに
ナタ2の大ヒットにより、関連銘柄だけでなく監督への注目度も日増しに高くまっています。ナタ2の監督を務めたのは今年45才の餃子(本名は楊宇)氏で、元々は四川省の医学系の大学に通っていましたが、3年生の時に3次元コンピュータグラフィックスアニメーションソフトウェア「MAYA」に興味を持ち始めると、卒業後には医師となる道を捨て、広告会社への入社を決断します。当初は仕事の合間にアニメーションを制作していましたが、最終的には広告会社も辞めてアニメーション1本に絞ることに。父親はすでに亡くなっていたため、広告会社を辞めた後の生活は母親が受け取る年金に頼ることになり、3年にわたって親の脛をかじっていたとされています。
一方、餃子氏が1人で制作を手掛けた「打、打個大西瓜」が観客や業界から高い評価を獲得するなど軌道に乗り始め、その後5年の時間をかけてナタ2の前編を完成。今回のナタ2の大ヒットを受け餃子氏は脛かじりから一転、興行収入100億元のヒットメーカーに。夢を諦めない生き様に多くの人が惹きつけられているようです。
ナタ2に続けるか、次のヒット作に期待
なお、ナタ2は中国国内だけでなく、海外でも人気を博しているようです。これまでに豪州やニュージーランド、フィジー、パプアニューギニア、米国、カナダなどで上映が始まっており、日本でも公開が予定されているようです。
中国では新型コロナウイルスの感染拡大と厳しい防疫対策を受けて映画館が全面的な営業停止に追い込まれるなど一時は壊滅的な打撃を受けていたこともあり、今回のナタ2の大ヒットは嬉しいニュースとなっています。中国では春節のほか、労働節(メーデー)や夏休み、国慶節などに合わせて新作の公開が増えるため、ナタ2に次ぐヒット作の出現に期待がかかります。