中国株投資を始めるためのキーワード

「n中全会」、5年間に7回開催の重要会議

中国株投資を始めるためのキーワード。今回は「n中全会」について紹介します。中国共産党の最高機関で、事実上の中国の最高指導機関である共産党大会(正式名称は「中国共産党全国代表大会」)は5年に1回しか開かれませんが、その間には共産党の幹部らが集まる重要会議「n中全会」が年に1-2回開かれます。

 

中央委員会委員らが参加、最高指導部人事や党の方針・路線などを決定


「中全会」は中国共産党中央委員会の全体会議のことです。nには数字が入り、例えば1回目の会議は「1中全会」、2回目の会議は「2中全会」と呼ばれます。そして、何回目の党大会の後の何回目の全体会議にあたるかの数字と組み合わせて、「第11期3中全会」や「第20期2中全会」のように、会議の略称が決まります。


会議の参加者は、共産党大会で選ばれた中央委員会の委員と候補委員です。中央委員会は、共産党大会の閉会期間中に、党大会を代行して党を指導すると定められており、これがいわゆる「党中央」です。中央委員会は約200人、候補委員は約170人。候補委員は委員に欠員が出た場合の繰り上げ当選の対象者だけではなく、委員と同じように、全体会議に出席し、議論に参加します。ただ、発言権はありますが、投票権はありません。この全体会議で最高指導部の人事をはじめ、党の路線や方針、国家の発展計画など決定されます。


「n中全会」は5年間に7回、開催時期とそれぞれのテーマ


1992年に開かれた第14回党大会以降の直近30年は、中央委員会は1期ごと、5年間に7回の全体会議を開くことが慣例となりました。会議の開催時期と主なテーマも大体決まっています。会議はいずれも非公開ですが、会議後に「公報」(コミュニケ)が発表されます。

 

「1中全会」は共産党大会閉幕の直後に開かれます。例えば、習近平氏の3期目続投が事実上に決まった第20回共産党大会が22年10月22日に閉幕しましたが、その翌日の23日に「第20期1中全会」が開かれました。この会議のテーマは人事です。中央政治局委員(通常25人、第20期は24人)、中央政治局常務委員(7人、いわゆる「チャイナ・セブン」)、中央委員会総書記(最高指導者)などが選ばれ、最高指導部の人事が正式に決まります。


「2中全会」は、党大会の翌年、3月の全国人民代表大会(全人代)の前に開かれます。「第20期2中全会」は23年2月26-28日に開かれました。「2中全会」では、「1中全会」で決まった党の指導部新体制下での政府人事がテーマになります。この会議で全人代に提出する国家機構指導者の推薦名簿と全国政治協商会議(全国政協)に提出する政協全国委指導者の推薦名簿を審議して採択します。全人代が中国共産党の提案を否決したことはこれまで一度もありませんので、政府人事は事実上、「2中全会」で決まります。


「2中全会」以降、次回の共産党大会が開かれる前の年まで4回開かれます。「3中全会」は党の新指導部発足後の約1年後に開かれることが多く、新指導部の中長期的な国家運営の基本方針を決めるため、海外メディアからも注目度の高い重要な会議になります。


「4中全会」は政策の具体化、「5中全会」は「5カ年計画の方針」、「6中全会」は次回党大会以降の方針や人事が主なテーマになります。そして、「7中全会」は次回党大会の約1週間前に開かれます。「前のものを受け継ぎ、後のものを導く」役割を果たすとしていますが、党大会の準備の側面が大きいです。

この連載の一覧
「打風不停市」:悪天候下での通常取引、初回は混乱なく通過
「上海証取の株券ペーパレス化」:世界に先駆けて実現
「新中国の証券取引所の誕生」(その2):“正式開業”は上海が第1号
「新中国の証券取引所の誕生」(その1):“営業開始”は深センが第1号
「市場介入の始まり」:投機熱抑制と相場救済
「先A後H」:A株企業の香港上場、美的集団で注目 新たなトレンドに
「証券口座の開設者急増」:中国で株式投資ブームが再来?
「香港小売業」:かつての「買い物天国」、中秋節・国慶節で巻き返しに期待
「無人タクシー」:商業化に熱い期待
「プライマリー上場切り替え」:アリババ集団が手続き完了、本土投資家も近く投資可能に
「蘋果概念株」:iPhone16発表控え再注目、代表銘柄に瑞声科技やBYDなど
「パンダ寄贈」:国慶節に香港へ2頭、経済効果に期待高まる
「中国股民の誕生」:冷淡から熱狂へ 1990年の株式投資ブーム
「相互取引制度」:本土投資家は香港株に、海外投資家はA株に投資が可能 制度の整備進む
「新中国の証券取引市場の誕生」:発行市場の広がりで流通市場が生まれる
「中国恒大集団」:本土不動産子会社に罰金、仲介機関や監査事務所にも波及
「新中国の株券の誕生」:株式制度の原点からのスタート
「金と中国」:人民銀は21年11月から買い増し継続、産金株は高値更新相次ぐ
「万科企業」:中国不動産市場と資本市場発展の縮図
「白名単」:融資に適した不動産プロジェクトを集めたホワイトリスト
「中国不動産市場の誕生」:1980年代に初の分譲物件
「景勝地運営」:上場企業を通してみる中国観光地、黄山や玉龍雪山など
「辰年相場」:過去4回は平均14%上昇、風水では年後半に上昇か
「映画市場」:23年興行収入は4年ぶり高水準、国産映画が圧倒的存在感
「胡潤百富榜」:英会計士が趣味で始めた長者番付、トップは農夫山泉の会長
「三条紅線」:不動産企業が超えてはならない3本のレッドライン
「シグナル8」:台風襲来で取引停止、制度見直し議論本格化
「中国人民銀行」:中国の中央銀行
「中央1号文件」:新年最初の政策文書 20年連続で「三農」がテーマ
「房住不炒」:不動産投機を封じ込む中国の不動産政策基調
「人口問題」:61年ぶり人口減、かつては第2子で高額罰金
「香港証取の2通貨建て取引」:人民元グローバル化推進の一環
「一線都市」:近年は「新一線都市」も登場
「新エネ車」:高まる中国の存在感 BYDは日本進出
「明星株」:台湾歌手の関連銘柄が香港デビュー
「国務院」、最高国家行政機関
「中央経済工作会議」、経済関連の最高会議
「広州交易会」:年2回開催、貿易動向を占うバロメーターとして注目
「n中全会」、5年間に7回開催の重要会議
「共産党大会」、事実上の中国の最高指導機関
「最低賃金」:地域ごとに決定、上海は月給が10年で6割増
「結婚事情」:婚姻件数激減、背景には中国古来の固定観念?
「失業率」:若年層は5人に1人が失業、諦めムードも
「全国政協」、全人代と合わせて「両会」
「全人代」、国家最高権力機関
「中国の祝日・イベント 」:国務院が祝日スケジュールを年末に発表、近年は「独身の日」も台頭

中国株情報部 アナリスト

シ セイショウ

中国・上海出身。復旦大学を卒業後、外資系法律事務所で翻訳・通訳を担当。来日後は証券会社や情報ベンダーでの勤務を経て、2016年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

シ セイショウの別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております