中国株を始めるためのキーワード。いま中国では証券会社で口座を新規開設する人が急増しているようです。今回はそれについて紹介します。
9月下旬から口座開設数が急増、証券会社は休み返上の対応も
証券口座の開設者が急増し始めたのは9月下旬です。中国メディアの報道によりますと、多くの証券会社で口座の新規開設数が前月に比べでおおむね50-300%増。証券大手の国泰君安証券(02611/601211)が今年6月に開設したフィンテック技術に特化した支店では、1日の口座開設数が前月平均の10倍にも達しました。証券会社の社員は対応に追われて連日の残業。広発証券(01776/000776)広州支社の22営業部が土曜日、日曜日の9月28日と29日を通常営業に切り替えるなど、休み返上で口座開設に応じる証券会社も少なくありません。中国では10月1日から国慶節連休(1-7日)に入っていますが、それでも60社以上の証券会社は連休中も人員を配置し、オンラインでの口座開設手続きを継続すると発表しています。
過去数年にわたり、米ダウ平均や、日経平均など多くの国で株価指数の過去最高値の更新が続いたとは対照的に、中国の株式市場は低迷しました。不動産不況を発端に景気が落ち込み、先行きのへ不安が強まる中で国内外を問わず多くの投資家が中国株投資から手を引きました。ここにきて投資熱が急激に高まった理由は市場の予想を大きく超えた中国当局の景気支援策です。
異例づくしの景気支援、株式市場は急騰
中国当局は9月24日に政策会見を開き、金融緩和、不動産支援、株式市場支援という3方位を網羅した異例の景気対策パッケージを発表しました。いままでの景気支援策と異なり、広範かつ強力な政策パッケージが市場にとってポジティブサプライズとなりました。
これだけでは終わりません。その2日後の26日に中国共産党は習近平総書記(国家主席)の主宰で中央政治局会議を開きました。会議では財政・金融政策の強化を指示。今回の中央政治局会議の開催時期は「異例」と指摘され、これも市場の予想外の動きとなりました。
中国当局が景気浮揚を図る本気度を感じたのか、これまでの悲観的な投資マインドが一転し、株式市場は急騰しました。24日終値は上海総合指数とハンセン指数がともに4%超の上昇。25日はやや「息切れ」気味でしたが、中央政治局会議の開催が伝わると26日以降は再び上げ足を速めました。国慶節連休に入るまで、9月24-30日の5営業日の累計上昇率は上海総合指数が21.37%、ハンセン指数が15.82%でした。売買代金も急増。30日の売買代金は上海、深セン両市場が計2兆5930億3700万元、香港市場メインボードが5058億3000万HKドルと、ともに過去最高を更新しました。
口座開設者は若年層が中心、本土A株は「個人投資家が新たな買い手に」との見方
情報サイト「財聯社」の調べによりますと、中国本土の口座開設者は若年層が中心。10月1日時点までのデータになりますが、25歳以下が約2割、26-35歳が約3割、36-50歳が約4割、50歳超が1割。
ヘッジファンドなど機関投資家からの資金流入が相場を押し上げた大きな要因ですが、本土A株では個人投資家が新たな買い手になっているとの見方もあります。JPモルガンは本土の個人投資家が持つ資金が非常に潤沢と指摘しています。2023年に株式投資が中国の家計金融資産に占める割合はわずか6%で、銀行預金が46%を占めていました。A株市場で流通株式の時価総額が約76兆元でしたが、普通預金残高は39兆元に上っていました。このため、個人による小規模の資産配置の調整が株式市場に顕著な影響を及ぼすとみられます。
中国では過去にも株式相場が活況になりますと、口座の新規開設が急増し、株式投資ブームが巻き起こることは何度もありました。国慶節連休明けの10月8日の本土相場が注目されます。