中国株投資を始めるためのキーワード。今回は共産党大会について紹介します。全国人民代表大会(全人代)と混同する方もいらっしゃるようですが、両者は別物です。日本で言えば、全人代が国会で、共産党大会は自民党大会のような感じです。
事実上の中国の最高指導機関、ほぼ非公開で開催
共産党大会の正式名称は「中国共産党全国代表大会」で、中国共産党の最高機関です。中国では共産党員以外も参加する毎年3月開催の全人代が「国家の最高権力機関」と位置付けられていますが、全人代が中国共産党の提案を否決したことは、これまで一度もありません。だから、共産党の最高機関である共産党大会は、事実上の中国の最高指導機関となります。
共産党の全国代表大会は1977年以降、5年に1度定期的に行われるようになっています。おおむね秋に開催し、会期は1週間ほどです。大会では重大問題の討論と決議、党規約の修正、中央委員会と中央規律検査委員会メンバーの選挙などが行われます。初日の開幕式と最終日の閉幕式はメディアが入りますが、ほかは人民大会堂でほぼ非公開で行われるため、謎に包まれている部分が多いです。人民大会堂でどのように中央委員らが選ばれ、その裏でどのような権力闘争が繰り広げられていたかは想像に任せるしかありません。
初回の共産党大会は1921年、上海のフランス租界内にある民家(参加者の自宅)で開かれ、中国共産党の結党大会となりました。当時は非合法の「秘密結社」のような存在で、最終日前日に密告を受けたフランス租界警察に逮捕されそうになったため、身の危険を感じた代表らは最終日の会議を浙江省嘉興市の南湖に浮かぶ船上に場所を移したそうです。
直近の開催は2022年10月で、第20回になります。習近平氏が異例の3期目続投を決めるなど、日本でも大きく取り上げられました。
共産党中央組織の構造、最高指導部は中央政治局常務委員7人
共産党大会の閉会期間中に、中央委員会が党大会を代行して党を指導すると定められておす。これを「党中央」と言います。中央委員会の委員は約200人、候補委員は約170人(候補委員も会議に参加し、発言権はありますが、投票権はありません)。中央委員と候補委員の立候補には5年以上の党歴があり、党組織の推薦が必要です。委員に欠員が出た場合、候補委員から得票の多い順に繰り上げ当選します。
中央委員の任期は次の共産党大会が開かれるまでの5年。中央委員会の全体会議は少なくとも年に1回開催し、5年間で7回開催するというパターンが慣例となっています。「1中全会」と呼ばれる中央委員会の第1回全体会議は共産党大会が閉幕する翌日に開かれます。この会議で、中央政治局委員(通常25人、第20期は24人)、中央政治局常務委員(7人、いわゆる「チャイナ・セブン」)、中央委員会総書記(最高指導者)などが選ばれ、最高指導部の人事が正式に決まります。共産党大会の翌年に中央委員会の第2回会議(2中全会)、その後の3年に第3-6回会議(3中-6中全)、次回党大会開幕の約1週間前に第7回会議(7中全開)が開かれるのが恒例になっています。
ちなみに、中央政治局の会議は月に1回、中央政治局常務委員会の会議は週に1回です。
共産党大会前後の株式相場
最高指導部のメンバーが入れ替わる5年に1度の共産党大会は中国最大の政治イベントです。この重要なイベントが近づくに当たり、北京をはじめとした中国の主要都市では、治安当局がテロ事件やデモ行進などの「秩序の乱れ」を取り締まるために厳戒態勢を敷きます。株式市場においても、金融当局が資本市場の安定確保に苦心するとされています。上海証券取引所が1990年11月以降、共産党大会開催前後の相場は次のようになります。
データを並べてみると、上海総合指数、ハンセン指数の動きはともに「年によってまちまち」という何とも言えない結果になります。ただ一つ顕著なのは、上海総合指数よりも、特に近年はハンセン指数のぶれ幅が大きいことです。もちろん、相場を動かす要因は共産党大会以外にもたくさんあります。ただ、筆者の肌感覚にもなりますが、共産党大会や共産党最高指導部の人事に対し、海外のほうが関心が高く、国内は報道こそ盛り上がりますが、一般の人々は割りと無関心な気がします。