12月FOMC、0.50%利上げ確率は約81%
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は今週、記録的なインフレを抑制するために引き上げている主要政策金利に関して、12月13-14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を前回の0.75%から縮小する可能性を示唆しました。
通常の3倍となる0.75%の大幅引き上げを4会合連続で実施した政策金利に関して、「インフレを引き下げるのに十分な水準に近づけば、利上げペースを減速するのは理にかなっている」と指摘。「利上げペースを減速する時期は早ければ12月の会合になるかもしれない」と述べています。ただ、「インフレ率は依然として高すぎる」と述べ、利上げ自体の継続は必要だと強調しています。
市場では12月FOMCでは利上げ幅が0.50%に縮小されるとの予想が大勢を占めています。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、12月FOMCでは0.50%の利上げ確率は約81%、0.75%の利上げを決める確率は約19%となっています。
出所:CME FedWatch Tool
各マーケットの反応は?
各マーケットはパウエル議長の発言に素直に反応。米国株相場は過度な利上げは景気後退を招くとの懸念が強かっただけに、これを好感する格好で株買いが広がり、NYダウは発言が伝わったあとの短い時間で700ドルを超す大幅上昇となりました。ナスダックに至っては4%超の急伸となりました。
一方、米債券市場では米10年債利回りが一時3.5012%前後と9月22日以来の低水準を記録しています。
また、私の担当分野であるコモディティ市場も大きく反応。金先物相場は中心限月2月物が8月中旬以来の1800ドル台乗せとなっています。米利上げ減速観測を背景に米長期金利の低下とドル安が進んだことで、「ドルと逆相関」の関係にある金には買いが集まりました。
原油先物相場も上昇が継続しています。中国が「ゼロコロナ」政策を緩和するとの期待が相場の支えとなる中、ドル安で原油の割安感が意識されたことも買いを後押ししています。また、「欧州連合(EU)加盟国はロシア産原油の上限価格を60ドルで合意に近づいている」との報道が伝わったことなども買いを促し、83ドル台まで値を上げる場面がありました。
そして、為替市場のドル円相場。パウエル議長の発言をきっかけに昨日1日には一時135.21円と8月18日以来約4カ月ぶりの安値を付けています。ドル円のチャートを見ると、9月22日の政府・日銀の為替介入をきっかけに10月はなんとか円安を抑えつつ、11月上旬には10月米消費者物価指数(CPI)の下振れでドル全面安に持ち込み、最後はパウエル議長の発言でドル安を加速させて、135円台まで押し戻した格好となっています。極めつけはサッカーWカップでの対ドイツ、スペイン戦勝利(一部ではこの逆転勝利が円買いを誘ったのでは?との憶測も台頭)。今年に入り急速に進んできた円安・ドル高がだいぶ修正されていることが分かります。
出所:Trading View
なお、政府・日銀は9月22日に24年ぶりとなる円買い・ドル売り介入に踏み切りましたが、それから10月27日までに総額9.1兆円分の介入を実施しています。財務省は今週11月30日に直近の1カ月では為替介入を実施していなかったことを明らかにしていますが、ドル円のチャートを見ると、かなりの効果があったことが分かりますね。
多くのメディアは為替介入に否定的、もしくはネガティブな記事を報じていましたが、個人的には「ありがとう日銀!」「ありがとう財務省!」と声を大にして伝えたいところです。2010年9月以降、民主党政権下で実施された円売り介入の利食いを行ったと考えると「ナイストレード」とも言えます。