コモディティという世界

第44回「小麦の国際価格、下落継続 2年ぶりの安値」

小麦の国際価格、約2年ぶり安値

 

小麦の国際価格は下落傾向が継続しています。国際指標である米シカゴ商品取引所の小麦先物(期近)は昨年3月に1ブッシェル=13.6ドルと史上最高値を更新しましたが、そのあとは次第に売りが優勢となりました。5月上旬には2021年4月以来約2年ぶり安値を更新しています。

 

指標となる米シカゴ市場の小麦先物は3日、一時1ブッシェル6.04ドル前後と21年4月以来の安値を更新。豪州やブラジルなどでの生産が増えるとの見方から、需給の緩みが市場で意識されました。米金利の上昇とそれに伴うドル高で、ドル建てで取引される先物価格の割高感が強まったことも売りにつながりました。

 

NY小麦先物の日足チャート

出所:Trading View

 

 

 

市場では「この下落の流れに無理に逆らうべきではない」との声が聞かれています。「目先は投機的な売買に振り回される、不安定な展開が続く可能性があるものの、米国の利上げ継続を背景にドル高がさらに進むシナリオや、米国の生産地における降雨によって作柄悪化懸念が後退していることには注意が必要だ」(よそうかい・グローバル・インベスターズ・インク代表 松本英毅)。

「ウクライナの供給不安は引き続き相場を下支えする可能性はあるものの、黒海からの輸出合意が結局延長されるとの見方が浮上してきていることにも注意が必要」といいます。

 

 

 

ロシア、ウクライナ産穀物輸出を妨害

 

「黒海からの輸出合意は結局延長される」との見方はたしかにありますが、期限を前にロシアによる揺さぶりもあります。

ウクライナのインフラ省は今月8日、「黒海経由でウクライナ産穀物を輸出する合意の履行をロシアが妨害した」と発表しました。ロシアがウクライナに入港する貨物船の登録や船荷検査を一方的に停止したとして、ウクライナ側は「合意違反だ」と非難しています。

 


合意ではウクライナに入港する貨物船と穀物を積んで出港した貨物船をトルコ領海で3カ国と国連が検査することになっています。ただ、ロシア側が協力しないため検査計画を立てられなくなり、8日時点では90隻が待機を強いられているようです(インフラ省)。ロシアは4月にも合意の履行を妨害しており、4月の輸出量は前月比3割減の278万トンに減少したといいます。


合意は来週18日に期限切れとなるため、延長に向けた協議が続いています。市場では「ロシアは自国産の穀物や肥料の輸出拡大を要求しており、履行妨害で揺さぶりをかける狙いがある」との声が聞かれています。

 

 

 

国内で小麦や穀物に投資する方法

 

さて、私たちが投資やトレードする際に小麦の価格を確認する場合は「国際指標である米シカゴ商品取引所の小麦先物」になりますが、実際に投資する場合にはどうすれば良いでしょうか?


お勧めは日本取引所グループ(JPX)に上場している「ETF」を活用することです。ETFとは、証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託で、「Exchange Traded Funds」の頭文字をとりETFと呼ばれています。上場しているETFは、株式と同様に相場の値動きに応じた自由度の高い売買が可能です。興味がある方はお使いの証券口座でこれらの銘柄をウォッチしてみてはいかがでしょうか。

 

★小麦ETF<1695>

 

正式名称はWisdomTree 小麦上場投資信託。対象指標はBloomberg Wheat Subindexで、計算期間は毎年1月1日~12月31日。分配金の支払いはありません。銘柄コードは1695で売買単位は100口単位となっていますので、1売買単位あたりの投資金額は11日時点で8310円となります。信託報酬は0.49%です。

 

小麦ETFの日足チャート

出所:Trading View

 

 

 

★穀物ETF<1688>

 

正式名称はWisdomTree 穀物上場投資信託。対象指標はBloomberg Grains Subindexで、計算期間は毎年1月1日~12月31日。分配金の支払いはありません。銘柄コードは1688で売買単位は10口単位となっていますので、1売買単位あたりの投資金額は11日時点で6065円となります。信託報酬は0.49%です。

なお、指標組入銘柄の構成は大豆、とうもろこし、小麦、カンザス小麦となっています。

 

穀物ETFの日足チャート

出所:Trading View




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為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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