FOMCは「dovish(ハト派)」
今週最大の注目だった1月31日-2月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では市場予想通り0.25%の利上げが実施されました。FOMCはインフレ抑制に向けた取り組みを続けていますが、そのペースを減速させました。一方、今後さらに複数回の利上げが適切になるとの認識も示しています。声明では「インフレ目標達成のため、継続的な利上げが適切になると予想する」とした前回までの表現が維持されました。
半面、利上げサイクルの終了が視野に入っている可能性があることも示唆。FF金利を「今後どの程度引き上げるか」を決定する上では、金融政策の累積的な引き締めを含む複数の要素に左右されると記載されています。従来はそうした要素は今後の引き上げ「ペース」を決定する上で考慮するとしていました。
また、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は会見で「我々は大きく進展したと考えているが、さらなる仕事が残されている」と発言。「継続的な利上げは適切」としながらも、「引き締め過ぎは望んでいない」「ディスインフレプロセスが始まった」などと述べています。
パウエル議長はインフレ抑制のため追加利上げが必要になる公算が大きいとの認識をあらためて示しましたが、マーケットは「全体的なメッセージをハト派的」と受け止めたようです。会見中は「disinflation(ディスインフレーション)」という言葉を多用していることが印象的でした。
パウエル議長はインフレ率が低下しつつあることを歓迎しつつも、その傾向が続くかどうかについては慎重な見方を示し、「予測通りの経済動向なら、年内の利下げは想定しない」と述べていますが、FF金利先物市場では今年後半の利下げが見込まれています。ある市場関係者は「パウエル議長は昨年12月のドット・チャートが有効かと具体的に尋ねられた際、『イエス』と言わなかった。1カ月のデータで米金融当局の考えが変わっている可能性がある」と指摘してます。
ECBの利上げサイクルは近く終了!?
欧州中央銀行(ECB)は2日に開いた定例理事会で、市場予想通り政策金利を0.50%引き上げることを決めたと発表しました。声明では「金利は依然として安定したペースで大幅に上昇する必要がある」と指摘し、次回3月の理事会でもさらに0.50%の利上げを実施する意向を表明しています。ただ、「その時点でその後の金融政策の道筋を評価する」としています。
ラガルドECB総裁は理事会後の会見で「物価上昇圧力は依然として強い」としながらも、「インフレ見通しに対するリスクはより均衡した」「3月の0.50%利上げ後は経過をみていく」と述べています。
中国経済の回復で資源需要が高まる恐れがある半面、足もとでエネルギー価格は下落基調にあります。次々回5月以降の理事会では金融政策の道筋を評価するため、大幅利上げの継続や減速の是非を慎重に検討するようです。市場では「ECBが利上げ停止、もしくはペース減速の可能性に道を開いた」と受け止められています。
もっとも、ラガルド総裁は「利上げは完了していないと認識」「インフレを2%の目標に回帰させるため、路線を維持する」と述べ、この日の決定は利上げサイクルが終わりに近いことを意味するという解釈を否定しています。
金(ゴールド)、FOMCで急騰しECBで急落
FOMCやパウエル議長の会見が「ハト派的」と受け止められ、米長期金利の低下などを好感する形でNY金先物相場は上昇しました。ただ、ECB理事会を受けて欧州債利回りの急低下とともにユーロ安・ドル高が進むと、一転下落しています。
NY金先物相場の5分足チャート
出所:Trading View
ニューヨーク商品取引所(COMEX)で取引の中心となる4月限はFOMC前の1トロイオンス=1940ドル付近から1975ドルまで上昇し、中心限月として昨年4月以来の高値を更新する場面がありましたが、ECB理事会後に1925ドル付近まで急落してます。まさに「行って来い」の展開となりました。
もっとも、「しばらくはポジション調整の売りが出やすく、相場は不安定になりやすいものの、調整終了後はトレンドが強気に傾くと予想する」との声が聞かれています。