金(ゴールド)、2000ドルの大台を突破 約1年ぶり高値
足もと、金価格の上昇が顕著になっています。ニューヨーク商品取引所(COMEX)で金先物相場の4月限は今週、1トロイオンス=2000ドルの大台を突破し、昨年3月上旬以来約1年ぶりの高値を付けました。経営危機に陥ったスイス金融大手クレディ・スイスを同業UBSが買収することで合意しましたが、世界の金融システムを巡る市場の不安は払しょくされておらず、「安全資産」とされる金を買う動きが強まりました。
NY金先物価格の日足チャート
出所:Trading View
米利上げ休止観測
昨日23日も米連邦準備理事会(FRB)が近く利上げを停止するとの観測が広がる中で買われ、続伸。終値ベースでも昨年3月上旬以来約1年ぶりの高値となっています。
FRBは今週開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場予想通り0.25%の利上げを決めましたが、声明では「インフレ目標達成のため、継続的な利上げが適切になると予想する」とした前回までの表現を削除し、「幾分かの追加引き締めが適切となる可能性がある」との文言を採用。利上げが近くいったん停止される可能性があることが示唆されました。
<The Committee anticipates that some additional policy firming may be appropriate in order to attain a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over time.>
これがハト派的と受け止められたことで、米利上げ局面が近く終了するとの見方が広がり、米長期金利が低下。金利を生まない資産である金への投資妙味が高まり、買いが進みました。
また、米長期金利の低下に伴って、外国為替市場ではドル安が進行。ドル建てで取引される金の割安感が意識されて相場を押し上げる要因となりました。
米10年債利回りの日足チャート
出所:Trading View
シリコンバレー銀行など米中堅銀行2行の破綻やクレディ・スイスの救済買収合意に続き、日米欧の6中銀による米ドル資金供給策の拡充など、金融市場の懸念解消に向けた動きは進んでいますが、市場の不安は完全には払しょく出来ずにいます。イエレン米財務長官が22日の議会証言で、預金保険制度の保護対象について「包括的な保険に関しては議論していない」と発言すると、米株式市場でNYダウが500ドル超急落。金融システム不安への懸念は根強く、これも金相場を支える要因となっています。
NYダウ先物の日足チャート
出所:Trading View
国内金価格は過去最高値
日本の大手貴金属会社で取り扱う「金」の小売価格も上昇しています。大手貴金属会社「田中貴金属工業」が発表した金の小売価格は、今週1グラム当たり9303円と過去最高になりました。米中堅銀行2行の破綻で「安全資産」とされる金の需要が高まったことが要因とされています。
市場関係者からは「米銀の経営破綻が金の価格に大きく影響しているようだ。現在は新規に金を購入する人と、高値で売ろうとする人の両方の動きが出ている。しかし、先行きに対する不安感が強まれば、金を買い求める人が増えるのではないか」との声が聞かれています。
GS、金の目標を2050ドルに引き上げ
米金融大手ゴールドマン・サックスは、金融リスクが意識される中、金が引き続き最良の「安全資産」との見方を示し、金価格の目標を1トロイオンス=2050ドルとし、これまでの1950ドルから引き上げました。
また、石油などコモディティ全般に渡り、「中国の需要が高まり続ける」と指摘。コモディティ価格に非常にポジティブで、S&P GSCI商品指数において「12カ月予想リターン27.9%」を維持しています。
ちなみに、ゴールドマン・サックスは『今年はコモディティの年になる』と予想しており、「持続的な上昇の頂点に立つのは金(ゴールド)」と年初から指摘しています。
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