穀物相場は反発傾向
このところ小麦と大豆、トウモロコシなど穀物相場の反発傾向が強まっています。シカゴ穀物相場では小麦と大豆、トウモロコシがそろって上昇。米国の生産地で乾燥が続いており、収穫量が減って需給が引き締まるとの観測から買いが優勢となっています。欧州における穀物収穫の減少予測も相場の上昇につながっています。
小麦・大豆・トウモロコシの日足チャート(年初来)
出所:Trading View
米農務省(USDA)が20日発表した作柄報告では、トウモロコシの「優」と「良」の合計が55%と前週(61%)を下回りました。産地の米中西部で乾燥予報が出ており、適度な降水が必要とされるトウモロコシの受粉期を控えて生育環境が悪化するとの懸念から買いが続いたようです。
また、米国産のトウモロコシと大豆の価格が直近高値を更新していることから、世界的な作物不足がバイオ燃料の混合率を低下させ、石油需要を増加させるとの期待が浮上。原油価格の上昇にもつながっています。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)8月限は今週、1バレル=72ドル台後半まで持ち直す場面がありました。
今週は欧州の各中央銀行が相次ぎ利上げ
スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は22日、市場予想通り0.25%の利上げを行い、政策金利を1.75%に引き上げました。声明では「物価の安定のため、さらに利上げが必要になる可能性は排除できない」と指摘し、追加利上げの可能性を示唆しました。
また、英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)は同日、政策金利を0.50%引き上げて、5.00%にすることを決めました。予想は0.25%の利上げでした。声明では「直近の指標は大きく上振れして、よりしつこいインフレのプロセスを示している」と指摘。「賃上げが幅広い物価上昇を引き起こす二次的効果について、解消に時間がかかる」との懸念を表明しました。
ノルウェー中銀も0.25%利上げ予想に対して0.50%の大幅利上げを決め、政策金利を3.75%としました。声明では「物価と賃金が急上昇を続け、インフレが定着する懸念がある」としたうえで、さらに利上げする見通しを示しています。
欧州では、ウクライナ情勢を背景にしたエネルギー価格の高騰は落ち着いたものの、食品やサービスなど、幅広い分野で物価高が続いています。欧州中央銀行(ECB)も先週、0.25%の利上げに踏み切っており、根強いインフレをいかに抑制するかが大きな課題となっています。
外国為替市場では円安が進行
この影響で、大規模な緩和姿勢を維持する日銀との金融政策の違いが意識されており、外国為替市場では円安が進んでいます。ポンド円は182.56円と2015年12月以来の高値を付け、スイスフラン円は160.00円と変動相場制後の過去最高値を更新。ユーロ円は156.93円と08年9月以来およそ15年ぶりの高値を記録しています。
各通貨の日足チャート(5年)
出所:Trading View
また、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が今週、議会証言で「今年あと2回の利上げが適切となるだろう」と述べたことで、米金融引き締めが長引くことが改めて意識され、円安・ドル高も進行。ドル円は143.45円と7カ月ぶりの高値を更新しています。
市場関係者からは「大幅な利上げに踏み切ったBOEのほか、スイスやノルウェー、それに中東のトルコも利上げに踏み切る中、世界の主要な中央銀行の中で日銀が大規模な金融緩和を続けていることが一段と際立つ形となっている。投資家は円を売る姿勢を強めている」との声が聞かれました。
日本ではインフレ鈍化の動きが見えず、本日発表された5月消費者物価指数は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年比3.2%上昇となったことが明らかに。電気やガソリンは下落に転じていますが、原材料高を商品やサービスに転嫁する動きが続いている格好です。足もとの円安は輸入品の値上がり要因となっており、円安による物価高が再び景気を冷やす懸念も。私たちの生活にも大きく影響を与えることにもつながります。