NY金先物、3カ月半ぶり安値
今週のニューヨーク金先物相場は価格調整が進む結果となりました。ニューヨーク商品取引所(COMEX)で取引の中心となる8月限は1トロイオンス=1900ドル付近まで売られ、3月15日以来約3カ月半ぶりの安値を更新しています。
NY金先物価格の日足チャート
出所:Trading View
前週末こそ、ロシア民間軍事会社ワグネルの創始者プリゴジンが週末に武装反乱を起こしたことで地政学リスクが高まり、安全資産とされる金に買いが入る場面もありましたが、結局この反乱は1日で頓挫。買いは続かず、すぐに失速しています。
マーケットの注目が集まっていたポルトガル・シントラで開催された欧州中央銀行(ECB)フォーラムでのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言は、「大半の当局者は年内にあと2回の利上げを見込んでいる」「(7月、9月の)連続利上げの可能性を選択肢から排除しない」と伝わり、米金融引き締め長期化観測が強まりました。これにより、米長期金利が上昇すると、金利の付かない資産である金に売りが優勢に。外国為替市場でドルが上昇したことも、ドルと「逆相関」とされる金の売りを誘いました。
29日に発表された1-3月期米国内総生産(GDP)確定値や前週分の米新規失業保険申請件数が予想より強い内容だったことも米金利の上昇とドル高を誘い、金相場の重しとなっています。
一段と価格調整が進むか
市場では「目先、一段と価格調整が進む」との予想が聞かれています。パウエルFRB議長の発言にあるように、米連邦公開市場委員会(FOMC)における経済見通し(SEP)が正しいとすれば、FRBは年内あと2回の利上げに踏み切ることになります。今後発表されるインフレ指標や景気関連指標が「強い内容」となれば、米金融引き締め長期化観測の高まりとともに米長期金利の上昇やドル高が進む公算は大きいとみています。となると、金への売り圧力がさらに強まる可能性もあります。
「米国がリセッションに陥るとの懸念も改めて強まるのは避けられないと見ておいたほうがよい。そうした場合には、投資家のリスク回避の動きが極端に強まるシナリオにも注意が必要になると思われる」(よそうかい・グローバル・インベスターズ・インク代表 松本英毅)との声も聞かれます。「安全資産としての需要が相場を押し上げる場合もあるが、株価の急落で市場がパニックに陥れば、金が安全資産ではなく価格が変動するリスク資産の一つと捉えられるようになることも考えられる。そうした状況下では金市場からも資金が流出し、値を崩す展開もあり得る」といいます。
7月FOMCでは0.25%の利上げ確率が上昇
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、7月25-26日のFOMCでは0.25%の利上げ確率が1週間前の74.4%から86.8%まで上昇。据え置きの確率は1週間前の25.6%から13.2%まで低下しています。また、年内利下げ確率はゼロとなっています。
出所:CME FedWatch Tool