原油先物価格、5カ月半ぶりの高値
今週も原油価格は上昇が続きました。先週は石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が日量約116万バレルの追加減産を行うと発表したことで、窓を大きく開けて始まりました。開始は5月からですが、今年末まで継続するとしています。これは予想外のことで1週間以上経った今も相場の支援材料となっています。
今週12日、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)で5月限の終値は1バレル=83.26ドルと清算値ベースでは昨年11月中旬以来約5カ月半ぶりの高値となりました。一時83.53ドル付近まで上昇する場面がありました。
先月には米国の銀行破綻やクレディ・スイス・グループの経営不安が高まったことで、欧米株式相場が軟調に推移。価格変動リスクの高い原油先物が売られ、64.36ドル付近まで下落し、2021年12月以来およそ1年3カ月ぶりの安値を付けていましたが、その水準からすでに30%近く上昇したことになります。
WTI原油先物価格の日足チャート
出所:Trading View
米インフレ指標の下振れ
今週、原油相場を押し上げた要因は米国のインフレ指標です。米労働省が発表した3月米消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.1%上昇と9カ月連続で鈍化。前月比でも0.1%上昇と伸びは前回の0.4%上昇を下回りました。これを受けて、米連邦準備理事会(FRB)による早期利上げ停止観測が高まりました。外国為替市場でドル安が進むと、ドル建てで取引される原油の買いに弾みが付いた格好です。景気悪化に伴うエネルギー需要減速懸念が和らいだことも買い安心感を誘いました。
出所:米労働省(U.S. Bureau of Labor Statistics)
戦略石油備蓄(SPR)を近く補充
米エネルギー省のグランホルム長官は12日、「バイデン政権は戦略石油備蓄(SPR)を近く積み増す計画だ」と表明しました。バイデン米大統領は昨年、ロシアのウクライナ侵攻に伴い高騰した原油価格を抑制するため、SPRから過去最大規模となる原油売却を実施していました。
米政権は1バレル=約67-72ドルかそれ以下の水準でSPR向けの原油を購入する意向を示しています。昨年10月、1億8000万バレルの原油を放出したことで、SPRは1983年以来の低水準に落ち込んでいます。市場では「SPRの買い戻し開始が示唆されたことに加えて、夏のドライブシーズンを前にした季節的なガソリン需要の増加や需給ひっ迫が原油価格の大きな下支えとなる可能性がある」との声が聞かれています。
国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は12日、「今年後半に世界のエネルギー市場がひっ迫し、原油価格が上昇する」との見通しを示しています。
日本でもガソリン価格が上昇 暮らしに影響が
原油価格の上昇が続けばインフレ圧力が強まり、日本でもガソリン価格など暮らしに影響が及ぶ可能性があります。ある市場関係者からは「産油国の方針によって変動する原油供給と、景気によって変動する需要のいずれも予想が難しい。今後、原油価格の上昇傾向がどこまで続くのかは見通せない状況」との声が聞かれています。
国の委託を受けてガソリン価格を調査している石油情報センターが12日に公表した「石油製品価格調査」によると、レギュラーガソリンの小売価格は今月10日時点の全国平均で1リットル=168.3円と先週から0.2円の値上がりし、4週連続の値上がりとなりました。
軽油も1リットル=148.4円と先週から0.1円値上がりし、4週連続の値上がりとなっています。灯油は18リットル=2000円と1円の値上がりとなり、2週ぶりに値上がりしました。
ガソリン価格の都道府県別の動きを見ると、値上がりが「26府県」、横ばいが「5県」、値下がりは「16都道県」となっています。私が住む群馬県は横ばいの169.9円となっていますが、ハイオク価格は値上がり(181.0円⇒181.1円)しており、若干ながらも影響を受けています。