円安・ドル高に歯止めかからず
外国為替市場ではドル円の上昇=円安・ドル高に歯止めがかからない状況となっています。ドル円は今週、一時149.91円と1990年8月以来32年ぶりの高値を更新しました。米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げが続くとの見方が強まる中、米長期金利が上昇しドルが買われている一方、日銀は大規模な金融緩和策を維持しており円を売る動きが続いています。
一方、コモディティ市場を見ると世界的な景気減速懸念の高まりで、原油先物相場は軟調な展開となっています。WTI原油先物価格は6月に1バレル=123ドル台を付けたあとはじりじりと上値を切り下げ、先月下旬には76ドル台まで売られる場面がありました。10月に入っても戻りは93ドル台で18日には81ドル台まで押し戻されています。
下のチャートは直近半年のドル円(オレンジの線)とWTI原油先物価格(ブルーの線)を比較したチャートです。縦軸は値動きの比率になります。
出所:Trading View
この半年で原油価格がせっかく20%超下落したにもかかわらず、ドル円が20%超上昇(円の価値が20%超下落)したため、日本人にとっては原油価格が高止まりしている状況になっています。
市場では「ガソリン価格の高騰を抑える政府の補助金=原油高を理由に始まった政策が事実上の円安対策に変質している。予算は既に3兆円を超えて膨らみ、出口が見通せない」との声が聞かれています。
ドイツではエネルギー事情が一段と厳しく
円安に歯止めがかからない状況下で、原油価格が再び上昇トレンドに転じた場合、エネルギー危機に直面する欧州のように苦しい立場に追い込まれる可能性もあります。
特に厳しい状況にあるドイツでは、これまで備蓄してきた天然ガスが枯渇すれば、エネルギー事情が一段と厳しくなると言われています。計画停電の実施や暖房・温水の使用制限など、ドイツ国民の生活は相当不便なものになると見られています。「場合によっては真冬でも冷水でシャワー」といった、先進国では考えられない事態に陥る可能性もあるようです。
電気代は高止まり 来春以降は再び値上げも
日本では、東京電力の平均モデルで9月に前年比30%前後の値上げとなり、今月、そして11月は据え置きとなっていますが、これは燃料費調整制度の上限価格に到達しているためで、これ以上電気代を上げることができないためです。ただ、今後は上限金額そのものが引き上げられる可能性もあります。岸田首相は先月下旬、「電気代が来年の春以降、2割から3割値上がりする可能性がある」と語っています。
今週に入って、「政府は値上がりする電気代の負担を軽減するため、1世帯あたり月額最大2000円程度を支援する案の検討に入った」との報道が伝わっています。電力会社に資金を配ることで、各家庭の料金を下げる方法が検討されており、値下げ分は明細書の「燃料費調整額」の欄に反映して、利用者がわかるようにする方向で詰めの調整が行われているといいます。
開始は来年1月以降のできるだけ早い時期とのことですが、私個人の正直な気持ちとしては「2000円では値上がり分を賄えないうえ、首相の発言は二転三転しており、実際どうなるか分からない」。「どうせ、これら対策費用は将来、『増税』という形でわれわれ国民に降りかかってくる」との諦念に至っています。